【島人の目】醜聞の大富豪、今後は


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 全米を揺るがした大富豪の人種差別発言に終止符が打たれた。NBA(全米バスケットボール協会)のアダム・シルバーコミッショナーが英断を下したのだ。ロサンゼルスに本拠地を置くクリッパーズのオーナー、ドナルド・スターリング氏(81)に「今後一切NBAに関与することを禁ずる」処置を発表し、事実上追放した。

 事の起こりはスターリング氏の若い女性の友達との会話の中で、黒人に対する侮辱発言があったのだ。2人の口論を女性友達がテープに記録し、テレビ会社が全米にインターネットを通じて報道した。女性友達が「自分には黒人の血が混じっていることはあなたも知っているでしょう。私はマジック・ジョンソンを尊敬しているのよ。米国社会の少数民族にも偉大な貢献をしているし」と言った。
 スターリング氏はそれに同意せず「今後一切黒人をクリッパーズの試合に連れてこないように」と断った。マジック・ジョンソン氏が激怒したことは言うまでもない。「スターリングは石器時代に生きる人間だ」と批判した。スターリング氏は女性友達に約2億円を与え、交際を秘密にしていたが、それを不服としたスターリング氏の妻が女性友達を訴えた。
 スターリング氏の財産は約2千億円といわれる。今回の処遇で2億5千万円の罰金が科せられ、クリッパーズは売却すべしとのコミッショナーの勧告がもたらされた。それが高じてスターリング氏と妻は50年以上の結婚生活に別れを告げるようだ。
 2006年、北米沖縄県人会の会長時代、スターリング氏と会ったことがある。リトル東京で行われた沖縄関係のワークショップに私設秘書キング・舞子さんがスターリング氏を連れて来て、僕を紹介したのが始まりだ。県人会役員20人をクリッパーズのゲームに招待してくれた。スターリング氏は恵まれない子供たちやユダヤ系民族に多大な寄付をしている。クリッパーズを手放し、息子をドラッグで失い、このたび妻と離婚するなど難題を抱えている。今後どのような生き方をしていくのだろう。
(当銘貞夫、ロサンゼルス通信員)