「ペリーが親川の住民助けた」 言い伝えを人形に


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再現されたペリー提督と娘の人形を手に笑顔を見せる小橋川キヨさん(右)と人形を作った座間味末子さん=15日、名護市中山の沖縄歴史民俗資料館

 【名護】長年の言い伝えが形に―。NPO法人県琉球創作人形協会副理事長で人形作家の座間味末子さん(65)が、新たにマシュー・カルブレイス・ペリー(ペリー提督)の人形を作り、15日に名護市中山の沖縄歴史民俗資料館常設の人形展に展示した。

「ペリーが名護市親川を訪れて病気の区民を助けた」という話を伝え聞いていた小橋川キヨさん(94)=市親川=の依頼を受けたもの。小橋川さんは人形を前に「会いたかったペリーさんに会えた」と目を潤ませた。
 歴史資料などによると、実際に親川に訪れたのはペリーが派遣した使者とみられるが、小橋川さんはペリーが来たと聞いていたという。
 使者が訪れたとみられるのは1850年代。髪や目の色、体つきが違う人物の登場に驚いた区民は山に逃げたが、小橋川さんの嫁ぎ先の家では、病気で寝込んでいた母親と看病をしていた娘が残されていた。その家に入った使者が見かねて娘に熱冷ましのアスピリンを差し出した。毒と思われないよう自身の舌で確かめて見せて渡したと言う。アスピリンを飲んだ母親はすぐに治った。
 小橋川さんは夫や親戚からこの話を聞いていた。ペリーの顔も姿も分からなかったので「どんな人か会ってみたい」とずっと思い描いていたと言う。母の日に資料館で人形展を見た小橋川さんは、その場にいた座間味さんにペリーの人形を作ってほしいと頼んだ。
 ペリー人形は小橋川さんが聞いた話の通り、母親の看病をしていた娘の人形にアスピリンを手渡している。娘の人形の髪には、小橋川さんの髪の毛を使った。座間味さんは「ペリー提督の話も沖縄の歴史の一部として作った」と話し、喜ぶ小橋川さんを見て目を細めた。