沖縄戦の実相を伝える「ひめゆり資料館」とは?


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資料館で体験者の証言などの資料に目を落とす来館者の親子=6月23日、糸満市伊原

 糸満市のひめゆり平和祈念資料館(島袋淑子館長)がことし6月23日で開館25周年を迎えた。25年間の総来館者数は1980万1496人(2014年3月末現在)に上り、沖縄を訪れる修学旅行生、観光客の多くが訪れている。

 同館は展示を通して戦争の実相を伝え、学徒に戦場動員への疑いを抱かせず、むしろ積極的に戦場に向かわせた当時の教育の恐ろしさ、平和の尊さを発信し続けてきた。

 13年度に修学旅行で来館した学校は2242校、31万7554人。1年間の総来館者は66万374人で、ピーク時よりも約30万人減っているが、県内の資料館では最多の入場となっている。

 ひめゆり平和祈念資料館の最大の特徴は、証言員が来館者に体験や平和の思いを直接伝える形式を取っていることだ。25年間続けてきた証言員による来館者への語り掛けは、言葉の力で展示内容への理解をより深める役割を果たしている。自殺するために沖縄に来た来館者が元ひめゆり学徒から戦争体験を聞いたことで、自殺を思いとどまったこともあった。

 資料館のもう一つの特徴は、国や県など公的機関の財政支援を一切受けていないことだ。同窓会、財団で運営資金を確保することで、時の政治に左右されて展示内容に手を加えられることを回避してきた。自分たちが継承したいことを一貫して伝える取り組みを維持してきた。

 生存者たちの手によってつくられた資料館は開館後も「どうしたら戦争の実相が伝わるか」という根幹課題を繰り返し自問しながら、さまざまな企画を重ねてきた。戦跡巡りのほか、開館10周年には「沖縄戦の全学徒たち展」を開催した。同展を機に沖縄戦に動員された全ての学校の元学徒が資料館に集まり、これをきっかけに女子学徒による「青春を語る会」の結成につながった。

 2000年以降は体験者が高齢化する中、戦争の記憶をどのように継承するのかという課題に取り組んできた。02年からは「次世代プロジェクト」を開始し、非体験者の「説明員」3人による「語り」も始めている。そのほか、非体験者の学芸員3人、職員6人が体験者と時間を共有し「ひめゆり」の思いを引き継いでいる。(玉城江梨子)

 

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きょうから特別展/新たな証言映像も

 18日からは開館25周年記念特別展「ひめゆりの証言員たち―沖縄戦を伝えてきた25年―」を開催する。特別展に合わせて同名の証言映像も新たに制作し、特別展で上映する。開館から25年間、館内で証言活動を続けてきた彼女たちが体験を語れなかった時代のことや、憲法9条への思いなどについて語っている。
 これまで戦争体験の記録は何度も撮られてきたが、証言員がどのような思いで語ってきたのかの映像記録はなかった。映像の後半部分では、平和な世の中を残したいという次世代への強い思いが語られている。

英文へ→Himeyuri Peace Museum marks its 25th anniversary