第96回全国高校野球選手権大会が11日に開幕する。今春の甲子園で準々決勝敗退した雪辱を胸に、県勢4年ぶりの夏制覇に挑む沖縄尚学。ナインの中には親元を離れて寮生活を送る選手もいる。その笑顔や涙を間近で見詰めてきた寮母の大城園子さんは“息子たち”の活躍を願う。
現在、野球部の寮には離島や遠隔地に自宅のある20人が暮らす。今回の甲子園出場登録選手では、エースの山城大智選手ら3人が寮生だ。食事は宅配を利用しているが、大城さんの手料理が必ず1、2品は並ぶ。具だくさんのイナムドゥチや納豆入り揚げギョーザ―。「量が足りないなと見かねて作り始めたら引けなくなった」と笑う。
大城さんが寮母になったのは2006年、東浜巨投手(現ソフトバンク)らが1年生の時だ。夫の大城英健・野球部部長が寮の管理を前任者から引き継いだのを機に、24年間営んでいた飲食店を畳んで夫婦で寮の2階に移り住んだ。
最初は部員との接し方にも苦労したという。日々接する中で「距離を置かず何でも話せる存在になろう。そして自分の子どもと思って怒る時は怒ろう」と心掛けるようになり、今では落ち込んでいる部員がいれば顔色ですぐに分かる。試合で結果が出ない、なかなかレギュラーになれないなど悩みを聞くことも多い。そんな時「頑張れ」という言葉はあえて言わない。「十分頑張っているのが分かるから」
父の日、母の日には寮生が小遣いを出し合って大城さん夫妻へプレゼントを贈る。久保柊人選手の母・文子さんは「大城さんは第二のお母さん。親にとっても心強い存在」と語る。大城さんも「選手たちにパワーをもらっている。活躍を褒めたときのニコッとした笑顔は何ともいえない」と頬を緩める。
春の甲子園での過去2度の優勝は球場で見届けた大城さん。「努力する姿をそばで見てきたので、ここまで来たら優勝してほしい」と、歓喜を分かち合う瞬間を心待ちにしている。(大城周子)