甲子園球場で開催中の全国高校野球選手権大会で県代表の沖縄尚学は20日、二松学舎大付との3回戦に臨む。17日の初戦でスタンドから懸命に声援を送った野球部員の1年生、高島輝一朗君(16)は昨夏に急性リンパ性白血病を患い今も治療を続ける。
「甲子園球場は大きくて感動した。先輩たちもかっこよかった」。いつか自分も憧れの舞台に立つ日を夢見て、ナインの躍進を期待する。
高島君が最初に白血病を発症したのは5歳ごろで、後遺症のため数年は脚に装具を付けての生活を強いられた。だが、回復した小学3年から野球を始めるとめきめき頭角を現し、与那原中時代は俊足好打の外野手として活躍した。
強豪の沖尚で甲子園を目指そうと決めた直後、病気が再発した。7カ月間にわたる無菌室での入院生活。抗がん剤によるつらい副作用とも闘う中で「もう一度野球がしたい」との情熱が高島君を支えた。
ことしの春先に退院。進学に葛藤はあったという。再び野球ができたとしても筋力は落ち、感覚も鈍っている。それでも諦めきれなかった。
母の直美さん(45)が「できたことができなくなった自分と向き合わないといけない。覚悟がいるけど、それでもいいの」と尋ねると、高島君は「(沖尚に)行きたい」と力強く返したという。復帰まで待つ、という比嘉公也監督の言葉も背中を押した。
今も通院は必要だが快方に向かっている。ボール運びなど裏方としてチームを支え、練習に参加する時間も延びてきた。比嘉監督は「彼を見れば、打てないとか不調だとかいった悩みが小さく思える。彼にしか伝えられないことがある」と存在の大きさを語る。
「野球部のみんなと弁当を食べたりおしゃべりをしたり。何げないことが幸せ」と言う高島君。沖尚ナインが深紅の大優勝旗をつかむまで、甲子園のスタンドで声を張り上げる。(大城周子)
※注:高島輝一朗君の「高」は旧漢字