【甲子園取材班】第96回全国高校野球選手権大会第10日は20日、兵庫県西宮市の甲子園球場で3回戦4試合を行い、沖縄尚学は二松学舎大付(東東京)に6―5で劇的なサヨナラ勝ちを収め、初の準々決勝進出を決めた。沖尚は今大会2回戦からの登場で、同校が夏の甲子園で2勝目を挙げたのは初めて。
沖尚は2010年に春夏連覇を達成した興南以来4年ぶりの県勢4強入りを目指し、22日の第1試合(午前8時開始)で三重と準々決勝を戦う。
◆主砲安里 サヨナラ打/“夏2勝”の壁突破
5―5の九回裏、先頭の中村将己が中前打で出塁した。西平大樹がきっちり犠打で送り、迎えた打者は4番安里健。舞台は整った。エースに頼ってばかりいられない。主砲の意地が詰まった一発が、劇的な形で8強の扉をこじ開けた。
安里はそれまでの打席で無安打だった。「決めてこいよ」。初戦で14奪三振完投し、この日も粘投する山城大智にそう声を掛けられ、気合が入った。1球目はファウル。感覚的にバットを指2本分短く持った。「相手投手の顔つきを見て真っすぐが来ると思った」。読み通りに捉えた4球目は、高く舞い上がって左中間へ。大歓声の中、震える足でゆっくりとダイヤモンドを回り、笑顔で待ち構える仲間の輪に加わった。
地方大会で1試合に登板しただけの2年生を先発起用した相手の“奇策”に対し、一回はミスにも乗じてきっちり4点を先取した。「かえって自分たちのリズムが崩れた」(比嘉公也監督)と二回以降は後続の投手陣を打ちあぐねたが、六回に暴投で同点、そしてサヨナラと持ち前の粘りを発揮した。中盤から1年生投手に命運を託した相手指揮官は「最後に幼さが出た」と力負けを認めた。
夏2勝の重圧から解き放たれ、新たな歴史を踏み出した。「優勝を狙う、というのを前面に出してもいいチームだと思う」。課題は多い。それでも、比嘉監督の言葉を信じたくなる1勝だった。(大城周子)