【島人の目】ロスのヤシ消失?


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 「沖縄と雰囲気が似てますね」。真っすぐ青空に向かって伸びているヤシの並木道を見て、沖縄からやって来た人々はみな驚きの声を上げる。ガジュマルやベンジャミンなど、沖縄と共通する緑も多いなか、ヤシといえばロサンゼルスを象徴する存在だが実は今、「LAからヤシが消える?」と論議を呼んでいる。
 理由は、急増する立ち枯れ対策として市が他の樹木への植え替え作業を開始したこと。市内にある約200万本のうち、すでに5000本が除去され、樫(かし)やプラタナスなどに姿を変えた。このままいくと、向こう10年間で100万本のヤシが姿を消すことになる。何とか保存を、と願う市民に、「老齢に加え、カビと害虫の被害が深刻。カビは土壌から感染するのでまたヤシを植えても枯れるだけ」と市は説明する。
 年中晴天のロサンゼルスは生活しやすい半面、雨が少なく、空気が乾燥しているので山火事が多い。風が強いため火の移りも早く、枯れ木が被災を拡大するので、家の周りの枯れ木の除去を市が呼び掛けている地域もあるほどだ。今回は環境保護意識の高まりも手伝い、葉の少ないヤシの替わりに、日陰を多くつくり、街路樹としての機能も高い樫の木へ植え替えよ、という樹木勧告リストまで登場した。
 ロサンゼルスのヤシは、18世紀にスペインから持ち込まれたものが始まり。
 (平安名 純代、米ロサンゼルス通信員)