糸満と中部商が九州出場権 県秋季高校野球、きょう決勝


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  第64回県高校野球秋季大会は4日、沖縄セルラースタジアム那覇で準決勝があった。糸満は首里を5-3で下して3年ぶり3度目、中部商は美里工を7-2で破り7年ぶり6度目の決勝進出を決めた。決勝は5日午後1時から同球場で行う。糸満と中部商は、来春の選抜大会出場の参考資料となる九州大会(25~30日・福岡県)の出場権を獲得した。

 糸満は一回に3連打とスクイズで3点を先制し、三回にも2点を追加。五回に2点を返されるなどしたが、継投でリードを守り切った。首里は20年ぶりの決勝を逃した。中部商は六回までに3点を奪うと、七回に3点、九回にも1点を加え攻撃の手を緩めなかった。美里工は七回に2点を返したが逆転はならず大会2連覇を逃した。

◆糸満 多彩戦略、持ち味発揮
 盗塁に犠打、スクイズあり、バントヒットあり。これぞ糸満野球という鮮やかな点の奪い方だった。3盗塁の大城龍生は「前の試合を見てピッチャーの癖は分かっていた」と涼しい顔だった。
 一回、内野安打で出塁した池間誉人が次打者の初球で盗塁を決める。無死二塁とし、次打者の岡田樹は適時三塁打。この回はさらに犠打、スクイズを絡めて計3点を先制した。三回は岡田がセーフティーバントと盗塁、大城が二つの盗塁で好機を広げ2点を挙げた。
 準々決勝で7回“完全試合”を達成した首里のエース・中真慶大の癖を事前に分析していた。首の動きや軸足の位置を見て揺さぶったという岡田は「相手は左投手。バントや走塁が鍵になると思っていた」と胸を張った。連打を許したら交代、という素早い継投策も功を奏した。金城乃亜、安谷屋正貴そして再び金城。2人で13安打を浴びながら3失点で切り抜けた。
 前の試合同様、中盤以降は打線がつながらなかった。上原忠監督は「機動力が逆に空回りした。まだ発展途上のチーム」と言う。優勝すれば九州大会での組み合わせが有利になる。「勝たないと甲子園に出られないというぐらいの気持ちで、勝ちにこだわりたい」と指揮官の口調は強い。1戦ごとに課題を解決してきたナインはあと一つ、階段を上れるか。(大城周子)

◆中部商 いざ頂点、チーム一丸
 勝利まであと1アウトで走者を出し、中部商ナインはマウンドに集まった。「笑おう」。誰ともなく声が上がる。エース前田敬太が三振に仕留めてゲームセット。「チームで固まりになって向かって行けと言っていた。一丸となって戦えた」と宮城隼人監督。試合後のベンチはまるで優勝したかのような大騒ぎだった。
 攻撃のハイライトは3―0の七回。9番の知名慎也が左前打で出塁し、稲福祐志郎と宮里柊麻が絶妙なバントヒットで続く。犠飛でまず1点を加えると、前田の適時三塁打でさらに2点。リードしながらも気の抜けない展開を打破し、優位に立った。先発全員の13安打。そのうち長打は前田の2本だけだ。「こつこつ点を取るのが自分たちのスタイル」と稲福。しぶとくつないで勝利を引き寄せた。
 勝負強い打撃を見せた前田はマウンドでも存在感を発揮。直球で押して凡打の山を築き、148球を投げて7安打完投した。七回に2点を失った場面も「同点までは大丈夫。(相手の攻撃が)終わるのを待つか、というぐらいの気持ちだった」と余裕たっぷりだった。
 台風接近による強風が吹く中で7年ぶりの決勝進出を決め、まさに「台風の目」となった中部商。前田は「ここまで来たら学校に優勝旗を持ち帰りたい」と頂上決戦へ気持ちを高ぶらせた。(大城周子)

◆きのうの結果
▽準決勝
糸満 5―3 首里
中部商 7―2 美里工

◆きょうの試合
▽決勝
【セルスタ】13時
糸満―中部商

糸満―首里 3回糸満無死、セーフティーバントを決める岡田樹=4日、沖縄セルラースタジアム那覇
美里工―中部商 7回中部商2死一、三塁、2点適時三塁打を放つ前田敬太=4日、沖縄セルラースタジアム那覇(金良孝矢撮影)