「再ブレーク盤」田原俊彦『35TH ANNIVERSARY ALL SINGLES BEST 1980-2014』

５枚組ベストは３８曲を歌い直した意欲作

　なんと全シングルを網羅したベストでは２５年ぶりとなる５枚組。しかも、１９９２年までの４２曲は、うち３８曲を歌い直した意欲作だ。ＮＡＴＡＢＡによる原曲に忠実な編曲も光る。

　元の音源ではフラット気味な音程から王子キャラが先行したが、新録音では歌声が自然に耳に入ってくる。それゆえ、『銀河の神話』『Ｈａｒｄにやさしく』『ＫＩＤ』を中心に、どれも歌の意味が深くなり、逆に、同時期で安心して聞けた『夏ざかりほの字組』が旧録音のままで気になったほどだ。“ハッ！”“ヘイ！”など即興的な掛け声も加わってショーのようで楽しい。
　以降の２７曲も、インパクト抜群なのはバラードよりも、８８年の『抱きしめてＴＯＮＩＧＨＴ』系統のダンス・ポップスで、特に近年は最新曲『Ｂｏｎｉｔａ』も含めラテン色を強め成功している。繊細な声ゆえにＳＫＹ－ＨＩなど若手とのコラボも５０代にして実に自然だ。本作を聞けば、必殺パターンを継続するにも相当の努力が必要だと感心するはず。
　（フォーミュラレコーディングス・７０００円＋税）＝つのはず誠
（共同通信）
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つのはず誠のプロフィル
　つのはず・まこと　１９６８年生まれ。総合化学会社、音楽宣伝会社勤務を経て、Ｔ２Ｕ音楽研究所設立。音楽市場分析、コンピレーションＣＤの企画・選曲などを手がける。