沖縄戦中、終戦直後の写真300点 収容所の様子伝える


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 県平和祈念資料館(国仲功館長)はこのほど、1945年の沖縄戦で米軍に従軍した日系人が沖縄戦中、終戦直後に沖縄の様子を撮影した写真約300点を入手した。元通訳兵、福本正さん(90)=米国ハワイ州=がそのほとんどを個人で撮影し、保管していた。

沖縄戦で破壊された那覇、前原または高江洲とみられる収容所(現うるま市)で余興をしたり、職業訓練を受けたりする住民の様子などを収めている。資料館学芸班の功刀弘之さんは「通訳兵と収容所の住民との交流の様子などがよく分かる貴重な写真だ」と語った。
 福本さんは広島出身の祖父を持つハワイ島生まれの3世。45年4月に嘉手納から沖縄本島に上陸、通訳任務に当たった。46年11月ごろまで沖縄に駐留し、沖縄中央銀行の設立に携わったり、住民にタイピングの職業訓練を指導したりした。
 県は本年度、沖縄戦に従軍した県系、日系米国人らの体験を集録する「日系米国人版戦争体験集録事業」を実施。ハワイでことし8月、福本さんを含む20人の証言を集めた。
 収容所などの戦争体験の証言を調査した元うるま市史編さん委員の座間味政光さん(70)、佐々木末子さん(66)は余興の写真を確認し、45年9月1日に米軍政府発令による前原市の誕生と福本さんの証言が重なることを指摘。「写真を見ると舞台裏から観賞する人も多く、この時期にしては盛大だ。前原市の誕生を祝い、催された可能性がある。見たことのない写真で貴重だ」と語った。
 資料館は6日午後2時、シンポジウム「日系二世ウチナーンチュが見た戦中、戦後」を同館で開催し、これらの写真や証言映像の一部を紹介する。入場無料。沖縄戦で住民に投降を呼び掛けた県系2世の比嘉武二郎さん(91)、戦後の舞鶴などでシベリアから帰還した元日本兵らを尋問した2世の大城義信さん(86)が登壇する。成果報告展も2月以降、沖縄や東京、横浜で実施する予定。シンポジウムなどの問い合わせは資料館(電話)098(997)3844。

1945年9月、前原、高江洲収容所とみられる場所で余興を披露する住民(県平和祈念資料館提供)
1945年9月、前原、高江洲収容所とみられる場所で余興を披露する住民(県平和祈念資料館提供)