【島人の目】根付くか長時間営業


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 28年前、ドイツに来て一番困ったことは買い物であった。私は、最初の1年思う存分ピアノの練習ができる牧場地に住んでいた。火曜日のレッスンを終え、緊張の取れた水曜日は買い物気分であった。いそいそと野道を20分ほど歩いてスーパーにたどりついたもののスーパーは閉店。このような失敗を何度しただろうか。うっかり土曜日午前中までに買い物をすることを忘れ、週末の食事に困ったことも幾度も経験した。
 いつでも買い物のできる日本から来て、水曜日以外の平日は午後6時まで、水曜日と土曜日は午後1時までに買い物を済ませなければいけないこと、日曜、祭日は全く買い物できないことは当初かなりのストレスであった。しかし、住めば都。日曜日閉店は結構いいものである。買い忘れても何とかなる。あきらめて、別のもので用を足してしまうし、買い物のストレスから解放されてゆっくり休養ができる。
 だが、ここ4、5年でドイツの閉店法も随分緩和され、営業時間が長くなってきた。昨年の暮れから閉店法が改正され、平日、土曜日は午後10時まで営業が許され、年に4回の日曜営業も許されるようになったのである。
 午後10時閉店を実施している店はまだかなり少ない。都心部では、午後8時閉店も多くなっているが、地方の町では、まだまだだ。閉店を遅くした大手スーパーに行ってみたが、あまり人がいない。24時間営業許可と日曜祭日営業許可もすべきだと言う声もあるが、人件費の高いドイツで果たして割が合うのだろうか。そして、日曜日は家族でのんびりと過ごすというドイツ人の生活形態も変わってしまうだろう。ドイツ人が便利さと生活習慣のどちらを重んじるか。たぶん後者だろうと思う。
(キシュカート外間久美子、ドイツ通信員)