翁長知事会見 質疑応答全文


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 翁長雄志知事の就任会見での報道陣との質疑は次の通り。

 【普天間問題】
 ―辺野古の新基地建設を造らせないという形で当選した。方針や意気込み、承認の撤回や取り消しについて聞きたい。
 「先ほども就任ということで県民の皆さまの方々へのごあいさつの中で申し上げたわけですけど、やっぱりあの美しい大浦湾を埋めてて新しい基地ができるというのは、どうしても今日までの沖縄の実情を考えますと、やってはいけないなと思っております」
 「そういう意味で今、埋め立ての変更申請とか出されていますけども、やはりこれはしっかりと検証をしてですね、まずは知事の権限で、どこまでこういった検証の中から物事が進めていけるかどうか、これをまず第一番目にやっていこうと思います」
 「そういった検証の中で法律的な瑕疵(かし)がないかどうか。これも瑕疵がありますとやはり取り消しということも視野に入って参りますので、その辺も専門家の意見を聞きながらぜひともしっかりと検証していこうと思います」
 「またそういったものの上に立って、状況の変化によっては新たな公益というか、撤回というようなことも視野に入るという法律論もありますので、こういったことも考慮に入れながら新辺野古基地は造らせないというような形で私自身の県政運営の柱にしていきたいと思います」
 ―宜野湾市の佐喜真市長から普天間飛行場の危険性除去について要請があった。知事としてどう取り組むのか。
 「昨年の埋め立て承認を前後しまして、普天間を5年間以内に運用停止をするというような4項目の一つがありますけども、ぜひともそれは可能であるならばまず実現に向けて日本政府のお力を貸していただきたいと思っております」
 「ただ、新辺野古基地の建設を県政としては認めるわけにはいきませんので、そういったこと等の中で考えるならば、新辺野古基地を造らせないということが普天間の固定化につながるかということになるわけですけども、やはり10年ほど前にラムズフェルド国防長官がおいでになったときに『普天間基地は世界で一番危険である』と、こういうような言葉を残しておりますので、やはり普天間の固定化は大変厳しいだろうと思っております」
 「で、よく代替施設を沖縄側が探すべきだという話もありますけども、戦後沖縄は基地に関しては自ら提供したことは一度もないわけですから、その自ら提供したわけでもない基地が今回、世界一危険になったからと言って沖縄側が代替施設を考えるというのはちょっとこれは理不尽ではないかなと思っておりますので、ぜひとも日本政府においてこの件についてはしっかりと対応していただきたいなと、そういうふうに思っております」
 ―辺野古移設の取り消しと撤回について。検証チームを作って瑕疵があれば取り消すと説明しているが、県民の民意が示されたということで直ちに撤回することもできるのではないか。取り消しができなければ撤回、という流れなのか。もう一点、来年春の工事着工までに権限行使する考えがあるか。
 「今日まで順序立てて話をするときに、知事権限の行使ということと、それから法律的な瑕疵、そして取り消しということでございました。これはこれから一つ一つ吟味していくわけでありますが、今仮定の話として、法律の瑕疵があるなしにかかわらず、撤回を先にやる可能性もあるかというようなご質問でした」
 「取り消しと撤回の違いは私も勉強させていただきましたら、取り消しはある意味で一番最初に戻って取り消しができると。撤回はその時点から以降が法律的な効果があるということだと聞いておりますけれども。今までは取り消しをまず中心にして、それから撤回ということでございますので、その意味ではその後の民意のもの以前にですね、法律的な瑕疵がある場合の方が意味合いが大きいのかなという感じもしますので、まずこれをやる意味において、その後に撤回ということが考えられるべきではないかと。今、現段階ではそう思っています」
 「ただこれは、私自身が選挙に臨むに当たっていろいろ私なりに検証した結果の結論でありますので、これから法律の専門家の皆さま方とも相談しながら、いい形で行くんであれば順序というものは、私からするとどちらでもいいのかなと思いますが、これはしかし私なりの判断という意味では答える形で申し上げられませんので、そういったことでご理解いただきたいと思います」
 ―来年春までに権限行使の考えについては。
 「期限的なものは権限という意味ではですね、変更申請とかありますので、これについては今、現段階で見た中で、なかなか変更申請の中身が乱暴だなというようなふうには思っていますので、これはしっかり検証させていただきたいなと思っております」
 【訪米・人事】
 ―日米両政府に直接要請という話もされているが、具体的なスケジュールはいかがか。また副知事以外の政策的、実務的なサポートをするポストの設置を考えているか。
 「日米両政府への要請はすぐ考えているかということです。今回のことについて一番、意表を突かれたのは衆議院の解散でありまして。本来ならば民意を受けて当選しましたら数日以内にまずは日本政府にごあいさつも兼ねて行くところでありましたが、衆院解散によりましてそれがかなわなくなっております。それでアメリカ等々への打診をする場合には、やはり私ども単独で段取りする場合と、それから外務省とか、そういったところとの力を得ながらのことも考えられると思います」
 「ですから、そういった総合的なものでいかにどういう形でするのが効果的なのか、全ての材料がそろっていないものですから、やっぱりそれはちょっと年内は、いろいろ頭の中で考える中でですね、やはり具体的に動き始めるのは年明けで、その中からいろいろ検証してですね、いい形で効果が上げられるような方法が見つかったなら、それにのっとってやっていきたいと思います」
 「それから、副知事とは別にということですが、今まで、政策参与というのが県の中では置かれていることもございました。ですから政策参与の中に基地問題、経済を含めて、それから私はアジア経済戦略構想とかですね、いろいろ公約してきたところがありますので、そういった分野等にも参考になる形で政策参与が置けるのであれば考えて行きたいが、今具体的に例えば基地の問題とか、アジア経済構想に持ってくるとか、そういうところまでは煮詰まっておりませんので、今はとりあえず12月定例会を乗り切ることを中心にして、それが終えてから、やはり年を越して、本格的なそういった問題の対応になっていくと思っています」
 【県議会対応】
 ―議会への対応の仕方について聞きたい。選挙では共産党を含めた枠組みで戦ったが、議会運営となると、「腹八部、腹六分」の方針だけでは、執行部が出す議案の採決で、共産と立場が分かれる場合もあると思うが、どういう考えで臨むか。
 「今回のオール沖縄、あるいはイデオロギーよりアイデンティティーと保革を乗り越えたという形でですね、今回の知事選挙、枠組みが出来上がっておりますが、それの中心になるのが、いわゆる去年の建白書の中に普天間基地の問題、県内移設の問題、オスプレイの問題こういったこと等でですね、大同団結をしましょうということで今回の知事選挙でございました。ですから、全ての分野において全ての会派がですね、一緒になるということは必ずしもあるとは限らないと思っております」
 「ですから、まあ県政の課題いろいろあると思いますが、いくつかにおいてはですね、そういう意味では是々非々でやっていただく場合もあるでしょうし、それからまあ今野党ということになるわけですけれども、自民党県連さん、あるいは公明党さん、とまたご一緒して、そういったものはご一緒できるものはあると思うんですよ。いずれにせよ基本的なベースを守りながら県政運営をして、そして、特に基地問題ですね、これはぶれることなくご一緒にやっていきましょうということになっていますので、これからまだどういう条例とかですね、出てくるのか見えてきませんので具体的な話はできませんけれども、とりあえず枠組みが決まったのはそういうことですので、それ以外の場面がある場合には今断定的にこうだああだと言うことは言えないと思っております」
 【衆院選】
 ―翁長さんの話の中で「意表を突かれた」解散だったとあったが、現在進行している衆院選で、先の知事選で示された民意について、どういう影響があると考えているか。
 「まあ本当に突然の解散で、私自身も戸惑ったわけでありますが、解散から1カ月もない中でですね、投票が行われるということであります。そうしますと、国政はいろいろ消費税の問題とかTPPとか集団的自衛権とかいろいろ課題があると思っておりますけど、沖縄県におきましては今1区から4区と、いろいろそれぞれの政策、それぞれやっぱしバラエティーに富んでですね、あることはあるんですが、私たちの枠組みから言いますとですね、やっぱり県知事選挙を受けての、私のその考え方を支える人材を強くおっしゃっているのが今1区から4区のそれぞれ候補者がおりますので、そういう意味では基地問題が沖縄では争点になるのかなあという感じは致します」
 「ただ本土というものとそれから国政選挙という意味合いを考えますと、知事選挙とはですね、必ずしも百パーセント直結するわけではありませんから、重きが置かれているというふうには思いますけどそれがどの程度重きが置かれているかということにつきましては私から判断の基準があるわけではありません」
 ―知事選から間もなく解散・総選挙という政権の判断、狙いに知事が沖縄県の状況と関連付けて考えていることはあるか。情勢報道では自公政権が非常に有利だが、その通りになった場合、とりわけ基地問題に与える影響はどのようにお考えか。
 「解散の意義につきまして、突然だということで戸惑ったということはございますけれども、やはり私からすると民意を受けて、ある意味ではできるだけ早く上京して、本土の皆さま方や政府の担当の大臣等々に要請をしたかったところでございますが、それができなくなったというようなことを含めますと、沖縄側からするとそういったものがなかなか政策の全国的なものになり得なかったという意味では残念な思いを強くいたしております」
 「それから自民党が大勝するような報道がなされているということでございますけれども、私は沖縄問題に関しましては、安定過半数から上の数はそんなには意味をなさないのではないかと。やっぱり日本国の安全保障の問題を沖縄がたった0・6%に74%の米軍専用施設があるということは、自民党が大きく議席を伸ばしてもあるいはまた、安定多数という形ぐらいであっても、そういったもの等のこれまでの考え方に大きな影響はないと思っております」
 「ですから従いまして、今あらためて民意が出ましたので、それをもって、しっかりとお話し合いをさせていただきたいなというふうには思っております。そして21世紀ビジョンの中で沖縄がアジアと日本の懸け橋になるということがしっかりうたわれておりますので、そしてまた内閣総理大臣の基本方針でも、日本経済のフロントランナーとして沖縄が果たす役割は大きいと書かれておりますので、そういったこと等の意味合いをですね、ぜひお話をさせていただいて、沖縄の役割についてですね、ご理解をいただきたいなというふうに思っております」
 ―安倍政権が大勝した場合に辺野古移設についても承認が得られたと主張される懸念についてはどうか。
 「そこまでは、どういうふうにみられるかということまで私が予測してですね、話するのは大変違う考え方になっていたら失礼になりますのでね、私からシミュレーションを描いて話をするということはなかなか難しいんですけど、ただいずれにしましても、その数の多さ、少なさでは、政権を担う中での多さ少なさでは、そう大きな違いがない中で、沖縄問題に対処していくのではないかなあというふうには思っております」
 【政府との対話】
 ―今の質問の関連だが、沖縄県知事が翁長さんになり、どういう形でメッセージを発するか、政府も注目をしている。あらためて基地問題、沖縄振興を含めて政府とはどのように対応していくか。
 「私も市長会の会長として稲嶺知事の場合にもその時の枠組みの中でですね、官房長官はじめ外務大臣、防衛大臣、沖縄担当大臣という形で議論をさせていただきました。仲井真県政の場合でも同じ立場でそばに座ってですね、補佐的ではありますけれども、意見の交換をさせてもらいました」
 「ですから、あの場所でどういう形で話し合いがなされるのかというのは、それなりに、その時にお二人の知事の発言等もお聞きをしながら私なりに勉強をさせてもらっておりますので、これからのもし私がこういう形でお話し合いをするということになりましたら、やっぱりいま持っている考え方をですね、しっかりとお伝えをして、その中からご理解を得ていくと、いうような形になるかとは思います」
 「ただ、そういう形のものがまたどういうものになるかということについても、まだ私からすると判断できませんが、まずは民意をというものをしっかりと日本政府に伝えて、そしてその中での答弁と言いますか、そういったこと等を勘案しながら、しっかりと沖縄の気持ちをですね、伝えていきたいと思います」【琉球新報電子版】