第4回市民公開講座「沖縄戦のこころの傷を追って」(沖縄戦・精神保健研究会主催)が13日、西原町町民交流センターさわふじ未来ホールであった。沖縄戦体験者が、心的外傷後ストレス障害(PTSD)症状に長年苦しみ続けた体験を語ったほか、精神科医が痛みを共有し連帯することで痛みから回復することを指摘した。
14歳で沖縄戦を体験した内原つる子さん(84)は両親と本島南部の戦場を逃げ回った。内原さんを苦しめたのは、逃げる途中で死体を踏んだこと。「夜中で何も見えずに本当にごめんなさい」とひざまずきわびたが、その夜は、死体を踏んだときの感じが忘れられず眠れなかった。
戦後は教員となったが、戦後40年以上たったころ、足の裏の灼熱(しゃくねつ)感が体の上に上がってくるという原因不明の痛みに悩まされ始めた。手術をしてもはり治療をしても良くならず、55歳で退職。約30年間ほとんど寝たきりの状態で過ごしてきたという。
転機が訪れたのは、2011年に蟻塚亮二医師の診察を受けてから。「原因が戦争と知りほっとした。同じような体験をした人と話し合うことで痛みが和らいだ」と振り返った。
主治医の蟻塚医師は「適切な診断を付けること、自分だけではないと分かることが治ることにつながるのではないか」と述べた。さらに福島での診察の状況にも触れ、「福島でも原因不明の症状に悩まされている人がいるが、沖縄戦PTSD治療と同じ治療法で良くなった。沖縄戦体験者が教えてくれた」と感謝した。
かいメンタルクリニックの稲田隆司医師は、引きこもりの青少年や依存症患者など傷ついた人間の回復事例を挙げ、「人から承認されること、自分の居場所があること、それらの力を受けて成し遂げることがトラウマ(心的外傷)から回復する三つの条件」と結論づけた。また「戦争体験者の語りには、大きな傷を負いながらも生きていくという希望を感じる」と話した。
英文へ→PTSD from Battle of Okinawa: sharing pain will help patients heal