移住支援利用、沖縄ゼロ 行政窓口整備進まず


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小田切徳美明大教授(左端)を進行役に移住支援策について意見を交換するシンポジウム=16日、那覇市

 地方自治体の移住支援策を利用した移住者が2013年度に全国で8169人に上り、4年間で2・9倍に増えた一方、沖縄では移住支援に関する行政窓口の整備が進んでいないため、ゼロだった。明治大の小田切徳美教授(農村政策論)らの調査で分かった。小田切教授は、沖縄県の人口増加計画や離島活性化の施策展開に向けた課題として指摘している。

 調査は明大と毎日新聞が昨年12月に共同で全国自治体にアンケートしたもので、県地域・離島課が那覇市で16日に開いた「移住促進と地域振興シンポジウム」で小田切教授が報告した。
 自治体の支援策を利用した移住者数が全国で最も多いのは鳥取県で962人だった。地域の過疎化が課題となっている鳥取では、県や市町村が移住者への支援策を充実させ、20~30代の若年層を中心に小規模な町村部への移住者が急増しているという。
 小田切教授は、沖縄は行政の支援が整備されていなくても県外からの移住者が多く、必ずしも行政支援は必須ではないとしつつ「移住しても1~2年の短期で戻る例も多い」と報告。「沖縄は1周早いラストランナーになっている。組織的対応がないことが、移住が(長期的)定住に結び付かない一因だ」と述べ、行政支援策を強化することで移住者の定住促進や将来の人口増にもつながるとした。
 一方、へき地や離島への移住促進の課題としては、地域社会への対応や住宅確保に加え「仕事がないことが最も大きなハードル。移住と地域づくりの好循環をどう進めるのか考えないといけない」と指摘した。
 県は人口増加計画で移住者の定着環境整備を柱の一つに掲げており、今後支援策強化を検討する方針。地域・離島課の田中克尚課長は「久米島町、渡名喜村、東村が移住支援に取り組んでおり、さらに広げていきたい」と語った。