銘苅淳のハンドボール魂 fromハンガリー(11)


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元チームメートのツィツィと。彼とは、パスの出し方や立ち位置についてよくやりとりした

<感情の制御>発散や切り替え大事
 今回はハンガリーに来てから僕自身が変わったなと感じたことを紹介します。
 こちらに来て驚いたことはたくさんありますが、中でも一番びっくりしたというか「ちょっとそれは…」と思ったのは、いらいらしたとき、物に当たったり叫んだりすることです。ミスをすると、ボールを思いっきり蹴飛ばしたり壁に投げつけたり。当初は「そんなことしてどうなるの? 周りが嫌な空気になるじゃないか」と思っていました。しかしほとんどの人がそうなので、そんな心配はいりません。空気が悪くなるという以前にそれが「普通」なんです。僕がいいなと思うのは、一瞬で全てが終わることです。ボールを投げつけていらいらを発散し、それを平然と自分で取りにいく。そしてより気合を入れて練習に向かうのです。

 日本人の感覚からすると「我慢が美徳」「周りへの影響を優先する」というものがあるかと思います。もちろん、それは素晴らしいと思います。しかし内へ内へとため込んでしまうと、結果的に目の前でやるべきパフォーマンスに集中できないこともあるのではないでしょうか。もっと言えば、周りに気を遣いすぎるあまり体調を崩す、なんてことにもなりかねません。僕はチームメートに「メカ、吐き出さなきゃ駄目だ」って言われたことがあります。そうしないと自分がしんどい。吐き出すことはいいことなんだ、と。プレー中に言い合いになることも珍しくありませんが、若手だろうがベテランだろうが対等に言い合います。その一瞬で互いのいら立ちをぶつけ、あとは和解して普段通りです。吐き出すけど引きずらない、という良さがあります。
 日常生活でやたらめったら感情を吐き出すのは問題だと思いますが、ことスポーツに関しては、感情を表現し、思いをプレーに乗せるからこそ面白いという一面があります。楽しい顔で、うれしい顔で、悔しい顔でプレーしていいのです。時にはいらいらだってあります。2秒で切り替え、次に気持ちを持っていく。「切り替えの技術」を磨いていきたいものですね。
(隔週火曜掲載。次回は2月17日)
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