バレンタイン、本命よりも「自分チョコ」 頑張る自分にご褒美


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チョコの試食で盛り上がる女性グループ=東京都中央区のプランタン銀座

 女性から男性へ、愛を込めて…。そんなバレンタインデーの光景はいまは昔―? 近年は意中の男性に贈る以上の金額で、自分用チョコレートを購入する女性が増えている。一方で、職場の同僚や女友達に渡す「義理チョコ」や「友チョコ」も健在。人間関係を円滑にするツールとしても活用されているようだ。

 「最盛期は約650種類のチョコレートがそろう」という東京都中央区のプランタン銀座5階の特設売り場。平日の昼にもかかわらず、品定めの女性でにぎわっていた。
 とろける食感と香りが楽しい高級チョコ、シャンパントリュフを「自分用に5個も買っちゃいました。もっと欲しい」と話すのは20代の女性会社員。「今日は会社はお休みですけど、同僚とチョコを買いに来ました」という。袋の中は少なく見積もっても5千円分は超える。「彼用の予算は3千円」と笑う。
 40代の女性会社員も「バレンタインシーズンのお目当ては『ホテル特製』など、いつもは買えない限定品。自分へのご褒美なので予算は決めません」ときっぱり。プランタン銀座ではそんな女性たちをターゲットに、パールを模したチョコやハイヒール形のチョコなど、「雑貨感覚で持ち帰りたくなる」ようなチョコも取り入れている。
 プランタン銀座が昨年12月に実施した「バレンタインに関する女性の意識調査」によると、自分向けチョコの購入予算は3954円で、本命チョコの予算3300円を大きく上回り、「2004年以来、最高額」(同社)となった。夫婦問題カウンセラーの岡野あつこさんは「自分チョコは頑張る自分への励まし」と話す。普段、仕事や子育てに追われる女性たちが真剣な表情でチョコを吟味したり、グループで試食を楽しんだりしている光景はほほえましい。色とりどりのチョコを前に「テンションが上がる」そうで、皆さん冗舌に、熱くチョコについて語ってくれる。「そうなんですよ、どうせオトコに高いものをあげてもありがたみが分からない」「自分で食べたほうがいいですよねえ」とこちらも取材そっちのけでトークに盛り上がる。
 一方、義理チョコの予算は1267円。「バレンタインが土曜に重なる今年のような年は売り上げは落ちがちですが、今年は前年並みをキープしている」と同社フーズ営業部の加園幸男さんは説明する。「相手に負担をかけないプレゼントで、職場のコミュニケーションを楽しんでいるのでは」とみる。あなたにとってバレンタインとは?と尋ねると「恥ずかしげもなく、感謝を伝えられる日かな」と話してくれた30代女性の言葉に思わずうなずく。その女性は、贈る上司の子どもの年齢や家族の人数まで考えて、チョコを選ぶそうだ。「小さい子どもがいたらお酒が入っているものを避けるとか。普段からコミュニケーションがとれていれば、家族構成も分かりますよね」。義理チョコプレゼンターのかがみだ。
 家族用に買う「ファミチョコ」あり、仕事関係用の「ビズチョコ」あり、自分用のチョコを買いに来る「スイーツ男子」もいる。バレンタインデーの楽しみ方は多様化している。
 わが家ですか? 取材の際に、自分とスイーツ好きの長女用に2個購入。「これは第1弾。次は2人で試食しながら買おう!」と親子のコミュニケーションはとる一方、ダンナの分はすっかり忘れていました。(白石智絵・共同通信記者)
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白石智恵のプロフィル
 しらいし・ちえ 長年所属した運動部を離れて、東京エンタメ取材チームに異動して1年近く。スイーツよりお酒が好きだが、この時期は特別。
(共同通信)