夢の続きが伝えるメッセージ SKE48卒業生たちのその後


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
『ツルノヒトコエ』公演でダンスを披露する桑原みずきさん(左)と妹の彩音さん=東京・王子

 「俺は夢を追い掛けたいんだ!」といったせりふを臆面もなく言えるのって一体何歳までだろう。20代がギリギリ? いやもちろん年齢なんて関係ないことは分かっている。ただ今の自分がそう言える勇気はない…。いや最近は何が夢かさえ分からなくなっていた。

 だが、ある映画を見て「そんなことではあかんぜよ!」と襟を正される思いがした。「SKE48」の6年間の軌跡を追ったドキュメンタリー『アイドルの涙 DOCUMENTARY of SKE48』(石原真監督)だ。
 華やかなステージの裏側の厳しいレッスン、メンバーの赤裸々なインタビューなどの映像を積み重ねていくことで、AKB48の姉妹グループとして誕生したSKE48のメンバーがもがき苦しみながらも、それぞれの夢に向かって階段を一歩一歩上がっていく姿を浮き彫りにしている。彼女たちが流す純粋な涙に心動かされてしまう。
 でもそれだけではない。この作品がただの“アイドル映画”で終わっていないと思わせる最大の要因は、現役メンバーだけでなく、SKE卒業生たちの「その後」も追っ掛けていることだろう。
 さまざまな壁にぶつかるなどして悩んだ末に、新たな場で夢を追い求めることを決意した卒業生たちが紡ぐ言葉は実にリアルだ。その新たな夢も最終的なゴールになるかどうかは誰にも分からないが、前向きなメッセージが伝わってくる。
 もしかするとアイドルからの卒業を「逃げ」と捉える人もいるかもしれないが、僕にはそう思えなかった。というのもこの映画を見る数日前、ひょんなことから、元SKE人気メンバーで現在は舞台女優の桑原みずきさんと、その妹でダンサーの桑原彩音さんが初めてプロデュースした歌とダンスの公演『ツルノヒトコエ』を見る機会があったからだ。
 東京・王子にあるライブハウスにはSKE時代からのファンも詰めかけ満員状態に。この日のために自分たちで構成やダンスの振り付けを考案したという2人。みずきさんのSKE時代のことは正直よく知らなかったが、姉妹たちの激しく華麗なダンスに圧倒された。
 ステージにはSKE卒業後も芸能界でそれぞれの夢を追い続けている小野晴香さん、出口陽さんも登場。伸びやかな歌声や可憐なダンスを披露し、会場から大きな拍手を浴びていた。
 3人ともメジャーグループの看板から離れ、決して順風満帆な道ではなかったかもしれないが、それぞれの夢の“現在地”が熱く伝わる公演だった。そんな機会もあってSKEの映画を見たときにみずきさんや出口さんの顔と名前が一致し、より共感できた気がした。
 ブログなどによると、桑原姉妹は次回公演に向けて話し合うファンミーティングを開催し、さまざまなアイデアを出し合ったという。それぞれの夢の続きに期待したい。
 さて、こちらは夢を語る前に目の前の仕事をしよう。だって20年近く前、記者を目指していた若き自分は、それこそが一番の夢だったのだから……という落ちで大丈夫でしょうか。(関口康雄・共同通信記者)
(共同通信)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
関口康雄のプロフィル
 せきぐち・やすお 1996年入社。現在は文化部に在籍し、昨年5月から芸能・放送を担当 。小さいころの夢は、ドラえもんのような人気漫画を書くこと。今は自分がドラえもん体形に…。