JHL コラソン旋風、終幕 大崎電気に27―31


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 日本ハンドボールリーグ(JHL)は21日、東京・駒沢体育館で男子のプレーオフが開幕し、準決勝が行われた。クラブチームとして初出場を果たし注目を集めた琉球コラソン(レギュラーシーズン4位)は4年ぶり3度目のリーグ制覇を狙う大崎電気(同1位)に27―31で敗れ、決勝進出はならなかった。

もう1試合は4年連続18度目の頂点を目指す大同特殊鋼(同3位)がトヨタ車体(同2位)に26―23で競り勝ち、22日の決勝は大崎電気と大同特殊鋼の対戦となった。

▽男子準決勝
大崎電気(リーグ1位)
 31―27(15―13,16―14)
琉球コラソン(リーグ4位)
 【評】4位で初出場を果たした琉球コラソンと、今季無敗で勝ち上がった大崎電気。波乱は起こらなかった。序盤から速い展開。後半は引き離しにかかる大崎に対し、コラソンも食らい付いたが、終盤での退場も響き力尽きた。独特の緊張感の中で互いにミスが出たが、大崎は勝負どころを逃さなかった。(大城周子)

◆必死な粘り及ばず リーグ無敗の牙城堅く
 参入7シーズン目でやっとたどり着いた夢舞台。琉球コラソンは持ち味の堅守速攻で会場を沸かせ、突き放されそうになっても必死に追いすがった。だが、リーグ戦無敗で勝ち上がった名門の牙城は崩せなかった。主将の水野裕紀は悔しさをこらえ、胸を張った。「ここに立てたことを誇りに思う」。唯一のクラブチームがトップリーグで起こした旋風が終幕した。
 前半は狙い通りロースコアに持ち込んだ。堅い防御で簡単にシュートを打たせず、村山裕次の積極的な切れ込みや棚原良の打点の高いシュート、速攻も重ねて2点リードを奪う場面もあった。だが4連続失点した前半終了間際からペースは徐々に大崎へ。東長濱秀作を起点に必死にしのいだが、際どい場面で細かなミスが出てしまう。対照的に大崎は分厚い攻撃で一気に畳み掛けた。後半残り5分、5点差がついたところで勝負は決した。
 今季、コラソンは上位3チームとの対戦で勝ち星を奪えなかった。水野が「これまでと比べるとまとまりきれなかった」と振り返るように、メンバーが同じ方向を向くまでに時間もかかった。過去最高の成績は輝かしいだけのものではない。それでも、練習環境や仕事との両立などハンディをはねのけ、ハンドボール界に風穴を開けた。エース棚原は「プレーオフの経験を『良かった』ではなく『悔しい』と思い、みんなが負けず嫌いの気持ちを持たないと同じ場所には立てない」。日本一への道はまだ半ば。新たな幕が上がる。(大城周子)

◆東長濱 いぶし銀の存在感
 頼れる大黒柱が、いぶし銀の存在感を放った。琉球コラソンのCB(センターバック)東長濱秀作が落ち着いたボールさばきでチームをもり立て、粘りを呼び込んだ。
 もともと万全ではなかった右手を2月の試合で再び痛め、練習ではほとんど攻撃に参加していなかった。この日は前半残り約5分からコートに入り、後半は攻守にわたって起点となった。劣勢になるたび声で仲間を鼓舞。速攻時にはGKや相手守備の位置を見てパスを出し、自ら持ち込んで相手の退場を誘った。
 日本代表として数々の国際大会を経験した31歳。2012年、それまで6年間所属した湧永製薬を辞め、故郷のチームへ移籍を決めた。絶対的な支柱としてメンバーをけん引し、時にはコーチの役割も担った。初のプレーオフへ道筋をつけたベテランは「毎年この舞台に来ることが僕たちのやるべきこと」とさらに上を見る。「これで終わったら面白くないでしょう。この舞台で勝てるチームをつくることをファミリアに約束する」。おとこ気がのぞく笑みだった。(大城周子)

◆格別な思い抱きプレー 夢かなえた松信
 琉球コラソンの松信亮平は、格別な思いを抱いてコートに立っていた。実業団時代にかなえられなかった夢を、自らの可能性を求めてやってきた沖縄のクラブチームでかなえた。大声援を背に「続けてきてよかった」とかみしめた。
 一昨年まで所属していたトヨタ紡織九州では、2度プレーオフに進出した。だが、1度目はベンチ外。2度目は東日本大震災の影響で中止になり「縁がないのかなと思った」。
 コラソンでは貴重な長身ポストプレーヤーとして活躍。この日も、激しい守備や倒れ込みながらのシュートなど、持ち前の闘志を見せた。「大崎は僕らが120パーセント出してやっと超えられる相手」と力の差を認め、「来季は(チームのために)自分がやるべきことを増やしていかないといけない」と責任感を口にした。

琉球コラソン―大崎電気 粘り強く自陣ゴール前を守るコラソンの棚原良(左)と松信亮平=21日、東京・駒沢体育館(普久原裕南撮影)
後半、26点目となるシュートを決める琉球コラソンの東長濱秀作(普久原裕南撮影)
前半、シュートを放つ琉球コラソンの村山裕次