テラピア不妊化成功 高温飼育、大きく成長


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 沖縄美ら島財団の中村將参与(68)、岡山大学理学部付属牛窓臨海実験所の小林靖尚助教(40)らの研究グループはこのほど、世界中で養殖されている淡水魚テラピアの高温飼育(37度以上)による不妊化に成功した。

不妊化した雌は通常の成熟雌より大きく成長するため、世界で行われているテラピア養殖への貢献が期待できるという。不妊化技術は特許を取得済みで、中村参与は「水産増殖に貢献できる技術になることを期待している」と話した。テラピア養殖は世界で250万トンが生産され、魚類では第2位の生産量がある。
 不妊化は、中村参与らがかつて琉球大学で指導したネパール人留学生ナラヤン・パンジットさんの実験から技術を確立した。成果は米国の国際科学雑誌にも掲載された。
 不妊化は、温度によって性が決まる魚類の特徴を生かした。中村参与によると不妊化した雌は、卵の成熟ではなく魚体の成長に栄養を費やすため、常温で飼育した成熟雌に比べ、飼育7カ月で体重が1・5倍程度に大きく成長する。腹から背までの体高が高くなり、肉付きも良くなる。
 不妊化は、自然河川などで繁殖した外来種撲滅の研究にも役立つという。県内をはじめ日本国内ではかつて生産が盛んだったが、養殖場から逃げたテラピアが一般河川などで繁殖し、在来魚を捕食して生態系を脅かしている。高温飼育で不妊化した雄は、精子を作らないものの生殖行動をすることから、中村参与は現在、繁殖を抑える研究にも取り組んでいる。