【キラリ大地で】アメリカ/下地幾乃さん 金融の最前線で活躍


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 「資産運用」というと難しく聞こえるが、「より豊かな人生を送るためにお金を育てるのは必要なこと」という意識は米市民の間で深く浸透している。広範囲にわたる金融市場で、投資家に代わって効率的な運用手法を駆使してリスクを抑え、より高いパフォーマンスを追求する専門家の存在が不可欠なアメリカで、スワップ・スペシャリストとして活躍しているのが那覇市出身の下地幾乃さん(29)だ。
 昭和薬科大学付属高校からストレートで慶応大学総合政策学部に合格。卒業後、2001年に渡米し、カリフォルニア州立大学リバーサイド校で大学院進学のための準備をしていたころ、同時テロが発生。ブッシュ米大統領が演説のため、同校を訪れた際に通訳を務めたのがきっかけとなり、02年、NHKロサンゼルス支局に採用された。
 取材を通して視野も広がり、充実した日々を送っていたが、もともとメディア志望ではなかった下地さん。「入社2年後に進路を再確認する」と自身に課したタイムリミットを迎えたとき、やはり金融や経済方面に進みたいという意志を確認。「自分の居場所は、自分が何をやりたいかで決めるべきだ。やりたい世界へ飛び込もう」と04年、ゴールドマン・サックス証券東京支店に転職した。
 世界各国から優秀な人材が集まってくる同社で、デリバティブを扱う部署へ配属された。「ぬるい所にいると漬かってしまう、どうせやるなら厳しい世界でやらなければ。私は天才肌ではないので、人の何十倍も努力してやっと同じラインに立てる。だから誰よりもたくさん商品を覚えて自分の強みにしようと猛勉強しました」。実力評価主義の同社で、寸暇を惜しんで仕事に専念し、次々と結果を出していく下地さんの業績は、確実に評価されていった。
 そんな中、再び人生の転機が訪れる。結婚だ。相手はロサンゼルス在住時に知り合った韓国系アメリカ人。ハーバード大卒で、市民のために権利の回復や獲得を求めて戦う弁護士で、ロサンゼルスの韓国系社会のリーダーを育成するNPO組織を立ち上げた若きホープだ。
 再渡米したロサンゼルスで、下地さんは、投資顧問会社「ペイデン・アンド・リーゲル」に就職。これまでに培ってきた経験と知識を発揮する日々を送っている。「金融の最前線に立っていることを意識しながら、常に誇りを持って楽しく仕事に励んでいます」。こぼれるような大きな笑顔は、まだまだ内に秘めた可能性を感じさせる。
 (平安名純代通信員)