沖縄戦の日本兵・満山さん 反戦手記、増刷重ね


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満山さんの手記を通し「遺志を継いでいきたい」と語る山中輝康さん(中央)、与儀喜一郎さん(左)ら

 沖縄戦に従軍した元日本兵で、戦後は遺骨収集に没頭した北海道の満山凱丈(よしたけ)さんが昨年1月18日、心不全のため91歳で死去した。晩年まで全国を巡る講演で反戦を訴えた満山さんが、1987年に出版した手記「帰れぬ者達―沖縄戦に果てて」は2011年に第3版を増刷。関係者は「満山さんは戦前に逆戻りするような時勢を憂えていた。

満山さんが世話になった沖縄の、特に若い人たちに読んでほしい」と呼び掛けた。
 満山さんは1945年、連隊砲の照準手として沖縄戦に従軍。砲弾の破片で左目を失った。南部・与座岳のガマに8月まで隠れ、所属中隊は170人のうち167人が亡くなった。戦後、沖縄で身元不明の遺骨が散乱する状況を目の当たりにし、たびたび本島南部で遺骨を収集するようになった。2010年に普天間基地を包囲する「人間の鎖」にも参加した。
 共に南部を回った与儀喜一郎さん(70)=那覇市=は「満山さんの隠れていたガマを見つけられたのはよかった。手記は天皇制国家の行き着く先を克明に表わしている」と話す。
 出版を担当した「十勝平和を考える市民の会」の山中輝康さん(81)=北海道=は「満山さんは再び戦争を始めようとしている安倍政権に『平和のために備えるというのは戦前の日本が言っていた言葉だ。戦争の愚かさを訴えてきた俺の戦後は何だったのか』と憤っていた。本を通し、その志を若い人たちに継いでいけるといい」と語る。手記はジュンク堂書店那覇店で購入できる。問い合わせは満山凱丈平和祈念文庫(電話)0155(36)4988。