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『ラストワルツ』村上龍著

どうやって死なないで生き延びていくか

 30年以上も続く雑誌連載『すべての男は消耗品である。』の書籍化、最新作(14冊目!)である。

 1976年生まれの私の周りには、人生で大事なことはみんな村上龍さんの小説から教わったという熱心なファンが多い。かくいう私はその代表という自負すらあって、高校の授業中に隠れて読んだ『コインロッカー・ベイビーズ』の衝撃が、今なお小説に関わり続けている直接的なきっかけになっているほどだ。
 さて、書店店頭を見渡せば、「人はどう生きるべきか」という本があふれているわけだが、幼いころから「おまえはサラリーマンにはなれない」と言われ続けていた村上さんは、では給料をもらわずに「どうやって死なないで生き延びていくか」を考え続けてきたという。それがデビュー作『限りなく透明に近いブルー』を書く動機であったし、以後の小説も基本的には自身が「生き延びていく」ために書いたものである。
 「どう生きるべきか」と「どうやって死なないで生き延びていくか」の間には、字面以上の大きな隔たりがある。
 日経平均が2万円を超えようとも日本の経済状況は依然として危ういという声が多い。過半数の企業でベア達成とあっても、疑いの念は晴れない。この反動が近い将来、想像もしていなかった形としてやってくるような気がしているし、もはや覚悟すらしているのは私だけではないだろう。
 そして、もしそうなった時、「どう生きるべきか」よりも「どうやって死なないで生き延びていくか」を考えていた人の方がずっと有利であることは間違いない。
 あとがきによると、本書のタイトルは当初「意味のない停滞」となる予定だったそうだ。「停滞」である以上は、そこに「意味」があろうがなかろうが、解消される可能性を秘めているとも考えられる。それが「ラストワルツ」に変わったということを、私たちはどのように受け止めるべきか。
 そして最後に、これはとても重要なことだと思うのだが、こんなあれこれを考えさせてくれる人には、村上さん以外に出会ったことがないのである。
(共同通信)
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日野淳のプロフィル
 ひの・あつし 1976年生まれ。出版社で15年間、小説、音楽、ファッションなどの書籍・雑誌の編集に携わり、フリーランスに。今、読む必要があると大きな声で言える本だけを紹介していきたい。

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『ラストワルツ』村上龍著

日野淳