『テレビの秘密』佐藤智恵著


社会
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ヒット番組のからくり
 最近テレビを見なくなったと思っていたが、本書が取り上げた番組のほとんどすべてを見ていた。テレビはもはや日常の風景の一部なのだ。日米のテレビ局で番組制作から経営戦略まで手掛けてきた著者が、番組のヒットや低迷の理由を解き明かす。現場の裏事情に精通しているだけに、なるほど!の指摘が並ぶ。例えば――。

 大ヒットした『半沢直樹』と同系の後継ドラマ『ルーズヴェルト・ゲーム』が意外と振るわなかった決定的な理由は、主人公が中間管理職か社長かの差にある。
 朝の連ドラ『花子とアン』は貧しい出自ながら戦中・戦後を生き、キャリア女性として成功するという『おしん』の構造をなぞる一方、2人のヒロイン、ファンタジー要素、男性の存在感の薄さなど、多くの点でディズニーアニメ『アナと雪の女王』と共通点を持つ。
 『紅白歌合戦』が高視聴率を維持しているのは、異なる世代にアピールする出演者たちを同じステージに登場させてチャンネル替えを防ぐという戦略による。「藤あや子+TOKIO+ふなっしー」というように。『相棒』をはじめ犯罪ドラマが乱立する理由は、一話完結で再放送しやすく、海外にも売れて続編や派生作品が作りやすいから。
 分析からいや応なく見えてくるのは現代の世相だ。中間管理職の悲哀、男性の非力、女性管理職の苦労、グローバル化……。ところで、かねがねEテレの革新性と実験精神に瞠目してきた私としては、次に著者のEテレ論をぜひ読んでみたい。
 (新潮新書 740円+税)=片岡義博
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片岡義博のプロフィル
 かたおか・よしひろ 1962年生まれ。共同通信社文化部記者を経て2007年フリーに。共著に『明日がわかるキーワード年表』。日本の伝統文化の奥深さに驚嘆する日々。歳とったのかな。たかが本、されど本。そのあわいを楽しむレビューをめざし、いざ!
(共同通信)

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