シークヮーサー成分、肥満下でもがん抑制 琉大チーム発見


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 琉球大学教育学部の照屋俊明准教授と禹済泰(う・ぜて)琉大地域連携機構客員教授(沖縄リサーチセンター社長)、韓国のハンリム大学のユン・ジョンハン教授の研究チームが、シークヮーサーの皮に含まれる成分・ノビレチンが、がん細胞の成長を促進するとされる肥満状況下でも、がん細胞の成長と転移を抑える効果があることを発見した。

このほど、神奈川県で開かれた国際学会「アジア栄養学会議」で発表した。研究チームは「今後、シークヮーサー製品を、既存医薬品と組み合わせる『補完療法』の可能性を目指し研究を進めていきたい」と述べた。
 研究チームは、高脂肪食を与えたマウスに皮膚がん細胞を移植し、がん組織の成長とがんのリンパ転移を検討した。高脂肪食の餌を与え続けたマウスでは皮膚がんは大きくなり、リンパ転移も促進したが、高脂肪食にノビレチンを混ぜた餌を与えたマウスでは高脂肪食のみと比べがん組織の成長とがんのリンパ転移が70%ほど抑えられた。
 ノビレチンに抗肥満効果とがん細胞の増殖を抑える効果があることは報告されていたが、肥満状況下でのがん組織の成長を抑えることは初めての報告となる。
 ノビレチンは、ミカンやグレープフルーツなどかんきつ類に多く含まれるが、中でもシークヮーサーの含有率は高く、温州ミカンの10倍とされる。照屋准教授らは、シークヮーサー残さからノビレチンを効率的に抽出する製法を確立しており、6次産業化を進める技術としても注目されている。
 禹教授によると、がん組織の成長とがんのリンパ転移を抑えたメカニズムとして、ノビレチンが、高脂肪食によるがん細胞の増殖や血管新生の促進を抑えるとともに、がん細胞の自殺(アポトーシス)減少を阻害することによりがん組織の成長が抑制される。また脂肪組織周辺にある転移に関わるマクロファージの増加を、ノビレチンが抑えることによってがんのリンパ転移を抑制した-ことが考えられるとした。(仲井間郁江)