「戦争の惨めさ心に」 慰霊の日・平和の詩の知念捷君


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詩に込めた思いを語る知念捷君=18日、うるま市の県立与勝高校

 【うるま】6月23日「慰霊の日」の沖縄全戦没者追悼式で、自作の平和の詩「みるく世(ゆ)がやゆら」(平和でしょうか)を朗読する県立与勝高校3年の知念捷(まさる)君(17)が18日、与勝高校で会見し、詩に込めた思いやエピソードを語った。

詩は認知症を患った祖父の姉が戦死した夫を想起する姿と、戦後70年の社会で進む戦争の記憶の風化を重ねて表現した。知念君は「風化にあらがうと言うと語弊があるかもしれないが、彼女の気持ちを、戦争の惨めさを少しでも心にとどめておきたいと思った」と詩に込めた思いを語った。
 知念君の作品は第25回児童・生徒の平和メッセージ展「詩の部門・高校生の部」で最優秀賞に選ばれ、式典での朗読が決まった。
 詩の題にした「みるく世がやゆら」という問い掛けについて「(それぞれの)自分自身の心に鎮魂の祈りを込めた、静かな問い掛けであってほしい」と話した。
 詩には「戦後七〇年 再婚をせず戦争未亡人として生き抜いた 祖父の姉」と、戦死し、遺骨が見つかっていない「祖父の姉の夫」を描いた。知念君は、祖父の姉から直接、戦争体験を聞くことはなかったが、幼いころから家族を通して「祖父の姉」の戦争体験を聞いたり、「祖父の姉の夫」の戦死を嘆く曽祖母の手記を見たりしていたという。
 知念君は「祖父の姉の認知症が進む中、『軍人節』という戦争未亡人をテーマにした歌を何十回も歌っている姿を生で見た。少しでも彼女の気持ちに寄り添えればと思い、詩をしたためた」と語った。
 詩の表現には琉歌や沖縄の言葉、自然を使った比喩を用いた。「琉球の言語を用いて沖縄の原風景やちむぐくる、平和に対する思いを込めた」と強調した。