きょう慰霊の日 残る基地、癒えぬ傷


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沖縄全戦没者追悼式前夜祭でたいまつに火をともす県遺族連合会の代表ら=22日、糸満市摩文仁

 沖縄は23日、「慰霊の日」を迎えた。一般住民を巻き込み、20万人余の尊い命や文化遺産を奪った沖縄戦から70年の節目の慰霊の日となる。激戦地だった糸満市摩文仁の平和祈念公園では午前11時50分から、県と県議会主催の「戦後70年沖縄全戦没者追悼式」が開かれ、戦没者のみ霊を慰めるとともに、世界の恒久平和を希求する。

県内各地で慰霊祭が開かれ、沖縄は慰霊と鎮魂の祈りに包まれる。
 追悼式には安倍晋三首相と関係閣僚、衆参両院議長が参加し、ケネディ駐日米大使も2年連続で出席する。
 激戦地を慰霊し行進する平和祈願慰霊大行進は午前9時、糸満市役所を出発し、追悼式に合流する。
 戦後70年を迎え戦争体験の風化が懸念される中で、県と県教育委員会は沖縄戦の記憶を継承するため、追悼式に児童生徒の参加を促す新事業を実施する。高校生による平和行進が初めて行われ、追悼式では糸満市立西崎小と南城市立大里南小の児童による合唱もある。
 国籍や軍民の違いを問わず、沖縄戦の犠牲となった人々の名を刻銘した「平和の礎」は95年の慰霊の日の除幕から20年となった。関係者の高齢化が進み、確認作業が困難となる中、全戦没者の刻銘に向けた努力が続く。
 国内の米軍専用施設の73・8%が県内に集中する不条理はいまだ解決されていない。米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に反対する翁長雄志知事の就任後も政府は移設作業を強行している。翁長知事は追悼式で読み上げる平和宣言で、辺野古への新基地建設の中止を求める方向となっている。
 国会では集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法案の審議が進められている。70年前の教訓から、一切の武力放棄を宣言した日本の姿が転換しようとする中、沖縄戦の犠牲者に寄り添いつつ、反戦平和を誓う一日となる。
 翁長知事は県民向けにメッセージを発表し「『命どぅ宝』の沖縄の心を世界に発信し、平和な未来を築いていくことが私たちの責務であり、使命だ」と強調し、正午の時報に合わせた黙とうを呼び掛けた。

◆灯に祈り 追悼式前夜祭に遺族ら450人
 【糸満】23日の慰霊の日を前に糸満市摩文仁の沖縄平和祈念堂で22日、沖縄全戦没者追悼式前夜祭(沖縄協会主催)が催された。式典には県遺族連合会や日本遺族連合会の関係者ら約450人が出席し、県遺族連合会の代表2人が祈念堂前のたいまつに火をともし開式した。参加者は戦没者の冥福と世界平和を願って黙とうをささげた。
 主催者を代表し、清成忠男沖縄協会会長が「戦後70周年の節目に、戦没者追悼の象徴である平和祈念堂から世界に向けて戦争の反省と恒久平和を発信することを誓う」とあいさつした。第2部では、琉球古典音楽各会派による合同献奏や琉球舞踊が奉納された。