マラリア犠牲者を追悼 石垣


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「犠牲者鎮魂歌」を初めてささげる田本徹さん(左)ら八重山戦争マラリア犠牲者の遺族ら=23日、石垣市の八重山戦争マラリア犠牲者慰霊之碑

 【石垣】八重山戦争マラリア犠牲者追悼式が23日、石垣市内で開かれ、慰霊之碑に平和を願う2曲の歌が初めてささげられた。遺族会有志が作詞した「犠牲者鎮魂歌」と遺族会の田本徹さん(77)が家族の戦争体験を基に作った「あの夏の日に」。

参列者は歌を通して犠牲者の無念に思いをめぐらせ、不戦を誓った。
 10人きょうだいの田本さんは1945年に母と妹をマラリアで亡くした。生後4カ月の末っ子の弟は衰弱し、終戦を迎える直前の8月10日、息を引き取った。
 戦後は東京音楽大学で声楽を学び、東京で小中学校の非常勤講師を続け、2000年に帰郷。音楽を通して家族の戦争体験を残そうと、07年に作詞作曲したのが「あの夏の日に」だった。
 この日は声楽家の上江洲みなみさんが独唱し、田本さんは涙ぐみながら聞き入っていた。田本さんは「個人的な歌を追悼式で歌うのはふさわしくないと控えてきたが、戦後70年で体験者も減る中で、あの悲惨な歴史を忘れてほしくない思いを強くした。歌ならみんなが歌いつなぐことができる」と話した。「犠牲者鎮魂歌」も同じ思いで作詞され田本さんが作曲した。