自民党若手議員による勉強会での沖縄2紙を「つぶす」発言や報道機関に対する規制と受け止められる意見があった問題で、27日付から28日付の地方紙やブロック紙31紙中18紙(琉球新報調べ)が社説でこれを批判した。
緊急声明や社説を速報で報じる新聞社もあり、言論の自由の圧力に反発する新聞社の動きが広がっている。
山形新聞は28日付1面で「言論封殺の暴挙許すな」との見出しで、寒河江(さがえ)浩二主筆・社長名の緊急声明を掲載した。緊急声明では圧力をかけ言論を封じる動きを「誠に遺憾であり、残念なこと」とし、沖縄2紙だけの問題ではなく「言論の自由、報道の自由、そして新聞の独立という民主主義の根幹にかかわる問題」と指摘し「(山形)県民にその是非を問いたい」と訴えた。山形新聞社によると、「緊急声明」の掲載は、少なくても1989年(平成元年)以降はないという。
琉球新報社の取材に対し、山形新聞社常務取締役の深山洋編集局長は「今後も言論の自由や報道の自由が脅かされるような事態があれば、今回同様に対応していきたい」と文書で答えた。
神奈川新聞社は26日午後5時半すぎ、27日付朝刊の社説を「速報社説」としてネットで公開した。同社によると、異例な対応。「速報社説」では百田氏発言を「沖縄を捨て石にした差別意識がなお息づくのをみることができる。自らはこらしめ、つぶす側に立っているというおごりが生んだ発言」などと批判。執筆した石橋学報道部次長兼論説委員は、速報の理由を「普通ではないことが起こっているということを示すため」と説明し「報道に携わる機関として抗議の声を上げなければならない」と話した。
京都新聞や山陽新聞は沖縄2紙の編集局長のコメントを社説に盛り込んだ。京都新聞は2紙が名護市辺野古の新基地建設などに批判的な報道をしていることに「政府・与党は苦々しく思っているのだろう」と指摘。その上で「だが、両紙の主張は県知事選や衆院選などで示された民意に沿っている。そんな地元の声と真剣に向き合おうとせず、政権に批判的な世論を生んだ責任を報道機関に転嫁しようとする考えは筋違いだ」とした。
茨城新聞や山陰中央新報など複数紙も沖縄2紙は選挙で示された民意を踏まえて報道していると訴えた。南日本新聞など複数の新聞社からは、若手議員から言論の自由を軽視するような発言があったのは「自民1強」のおごりの体質が根底にあると指摘した。信濃毎日新聞では「民意より自身の信条や国家観を重視する首相の政治姿勢がこの状況を招いてはいないか」と不信感をあらわにした。