【島人の目】点と点をつないだ情熱


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 1人の人間の情熱は、大きな岩をも突き動かす。そう教えてくれたのは、アメリカで初めてのニシムイ展をプロデュースしたジェーン・デュレイさんだ。
 「言葉は通じない。ただ、一緒に絵を描いている時が至福の時だった」。日米に散らばるニシムイの絵を集め展示会をしよう。そう決意したのは、遠く隔たった仲間たちとの再会を願うスタインバーグ教授のその言葉を耳にした時だ。
 あれから10年。アメリカ中で情報を探し求め、沖縄を訪れては1つ、そしてまた1つと作品を集めた。沖縄の血が流れているわけでもない。私財を投じ、1つの目標に向かってひたすら走り続けた原動力は「沖縄で青春時代を過ごした1人の人間として今、私がやらねば」という使命感だった。長い歳月は、ニシムイを通して自分の“故郷”沖縄を再発見する旅でもあったという。
 岬に佇(たたず)み、絵を描く青年たちの笑顔をとらえた写真。「私たちの友情はすべてを超越した最高のものです」と玉那覇正吉が手紙に記したように、バークレーの会場には「生きるために描く」という情熱を宿した画家たちの魂と友情が、鮮やかに解き放たれている。
 戦後美術復興論の向こう側にあるニシムイでの生活。「画家たちの魂が再会を喜んでいるのを感じる」と話すジェーンさんは、沖縄とアメリカに散らばっていた点と点とをつなぎあわせ、一本の「線」にした。新たな何かを生み出す力を感じさせるニシムイ展。一本の線は、沖縄とアメリカを結ぶ大きな橋となるだろう。
(平安名純代、ロサンゼルス通信員)