障がい者の沖縄戦体験を新県史に 教育庁が聞き取り


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 新沖縄県史編集委員会が、2017年に発刊を予定する沖縄戦についてまとめた新県史に、戦中の障がい者の置かれた状況についての記述が盛り込まれる予定であることが分かった。編集事務局の県教育庁文化財課史料編集班によると、市町村史でも障がい者の様子について記されている物はごくわずかといい、現在は体験者からの聞き取りが進められているという。

同班は「沖縄戦を歴史として残す上で、社会的に弱者とされている人たちのことを記すことは不可欠」としている。
 同班によると、沖縄戦を県史として発刊するのは1974年以来で、2011年から編集作業がスタートした。内容検討の中で、住民から見た沖縄戦の実相を盛り込むことが決まり、その中で戦中の障がい者についても記述する方針が決まった。
 戦中の障がい者をめぐっては、周辺から差別を受けていたことや、戦火から逃げる際に困難を極めたことが指摘されている。一方、当時の状況を語る人は限られており、記録としてはあまり残されてこなかった。新県史の編集では体験談の他に、日本軍が障がい者に対してどのような見方をしていたのかについて、聞き取りも含めた調査をしていくという。
 また新県史では、戦争トラウマや心的外傷後ストレス障害(PTSD)についても盛り込む方針で、沖縄戦の爪痕を記録として残していく。
 新県史の沖縄戦編専門委員会で部会長を務める吉浜忍沖縄国際大教授は「障がい者など当時の弱者については、これまであまり語られてこなかったが、沖縄戦の歴史を記録し、伝える上で重要」と指摘する。新県史では「沖縄戦が『現在進行形』であることを残していきたい」と述べた。(中里顕)