【島人の目】赤ちゃんポスト


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 以前からの日課となっていることだが、昼食時に2時間ほど英字新聞を読む習慣をつけている。日本からの「赤ちゃんポスト」のニュースを聞いて、4カ月前にロサンゼルスで起きた悲しい記事のことが思い出された。それは南カリフォルニアにあるS大学のキャンパス内での出来事だ。ホームレスがトラッシュビンをあさっていたらビニール袋の中に赤ちゃんの死体があり警察に通報した。
 ロサンゼルス市警(LAPD)は近郊の病院や大学に聞き込み調査を行い、東部海岸から来た白人女学生を逮捕した。道ならぬ恋の結果なのか、奨学金がカットされる不安なのか、両親が喜ばない異人種間との子供なのか、その理由を記事の中に見つけることはできなかったが、彼女がとった「取り返しのつかない行動」に悲しみを通り越して怒りが込み上げてくる。
 熊本市の慈恵病院が設置した国内初の「赤ちゃんポスト」に運用開始後、3歳ぐらいの男の子が預けられた、とのニュースに日本で賛否両論が巻き起こっている。
 アメリカでは、子供を育てる自信がないときは病院や教会が相談に乗ってくれるという。先の女学生はそのことを知らなかったのだろうか、相談する友はいなかったのだろうか。最高学府で学び、将来を約束されたであろう自分自身の一生も台無しにしてしまった。
 「赤ちゃんポスト」の設置は1人でも多くの人命救助につながるとわたしは思う。事件が起きてからは手遅れなのである。
(当銘貞夫、ロサンゼルス通信員)