平和発信の公園へ 対馬丸記念館、「旭ケ丘」に構想


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学芸員の説明を聞きながら館内を見学する那覇まちま~いの参加者ら=15日、那覇市若狭の対馬丸記念館

 疎開児童780人を含む1484人が犠牲になった対馬丸撃沈事件を伝える対馬丸記念館は、昨年度から那覇市観光協会が実施する「那覇まちま~い」のコースの一つとして記念館と旭ケ丘公園を案内している。記念館だけでなく旭ケ丘公園全体を「平和の杜(もり)」として発信し、さまざまな人が訪れやすい仕組みをつくっている。

 「学芸員・語り部と平和について考える一日」と題したツアーは6~8月限定。今月15日のツアーには7人が参加した。対馬丸記念館では学芸員の宇根一磨さん(26)が館内を案内。対馬丸撃沈事件の概要や、疎開、生存者の苦しみなどについて話した。
 小学3年生の息子と一緒に参加した坂本智栄(ちえ)さん(44)は「記念館も公園も初めて来た。戦争の資料館なのでもっと怖いと思っていたが、子どもに恐怖は与えずに、戦争の悲惨さはちゃんと伝わる展示だ。ガイドがつくことで理解しやすかった」と話した。
 このようなツアーと同時に、記念館を運営する対馬丸記念会が進めるのは「平和の杜」構想。「旭ケ丘公園一帯を那覇市の平和の拠点に」と、木々がうっそうとして暗い雰囲気だった公園を、木や雑草を切って、花を植え明るい雰囲気に変えた。
 記念館がある旭ケ丘公園には対馬丸で犠牲になった子どもたちの慰霊碑「小桜の塔」、戦時遭難船舶犠牲者を悼む「海鳴りの像」などの慰霊碑のほか、「鄭迥謝名親方利山(ていどうじゃなうぇーかたりざん)顕彰碑」「琉球音楽野村流始祖先史顕彰碑」など沖縄の歴史、文化に関する記念碑も多い。対馬丸記念会の外間邦子常務理事(76)は「戦争になると歴史や文化も破壊される。先人の歴史を感じながら、平和がずっと続くことを学ぶ場としたい」と意義を語る。
 平和の杜を象徴するのが小桜の塔隣にある「ふんばるガジュマル」。岩場に何本も気根をはわせ、どっしりとたたずむ。外間常務理事は「このガジュマルは台風が来ても倒れない。どんなことがあっても生きる生命力を感じる」と対馬丸で生き残った子どもたちの生命力と重ねる。「みんなが集い、平和について考える杜として成長させていきたい」と話した。
(玉城江梨子)