「はいたいコラム」 島山羊はオスがおいしい


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 沖縄のみなさん、はいたい~!今週から始まりました「はいたいコラム」です。山羊の取材に行ってきました。日本全国にいる山羊2万頭のうちの8千頭、実に4割を占める沖縄は山羊アイランド。各家に5~6頭という飼い方が多く、人々の暮らしに山羊が息づいてきたのが沖縄の文化といえるでしょう。

全国的にも荒れ地の草を食べる耕作放棄地の解消、学校飼育の命の授業など、山羊の多様な価値が見直されています。特に山羊チーズは個性があって人気ですが、春にしか子どもを産まないため、乳の出る季節限定というのが本州での常識でした。ところが!今回訪ねた糸満市真壁では、年2産を実現しているというではありませんか!わたしはびっくり仰天しました。生産者の努力はもちろん沖縄ならではの気候風土も貢献しているといえそうです。
 山羊の静かなブームを感じます。国際通りの居酒屋など観光客にも山羊刺しは人気ですが、その7割はオーストラリア産。教えてくれたのは沖縄県畜産研究センターの仲泊所長です。「本場の島ヒージャーならここ」と案内されたのは、糸満市にある「玉城やぎ料理店」。おかあさんが一人で営んでいます。薄いピンク色の山羊刺しは肉厚で、皮とゼラチン部分もしっかり付いておいしそう。酢醤油とショウガでいただくと、さっぱり肉の香りもほどよくおいしい~!すると所長から驚きの一言が!「これは若いね。おいしいのは大人のオスよ~」。
 山羊肉は成オスの方が風味豊かだそうで、実際、セリ価格はメス4万円に対してオスは6万円。古今東西畜産文化の中で、成オスの方が高い肉にわたしは初めて出会いました。これはおもしろい。地域の食文化は個性がなくてはなりません!
 21世紀最大の産業は観光だと言われています。もの余りの今、人が一番求めているのは、体験と感動です。そこでしか見られない文化、そこでしか味わえない料理。沖縄にしかないものこそ究極の価値なのです。さて、続いて出されたヒージャー汁と山羊の睾丸については、また今度にしましょうね~。
(第1、第3日曜日に掲載)
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 小谷あゆみ(こたに・あゆみ) 農業ジャーナリスト、フリーアナウンサー。兵庫県生まれ。介護・福祉、食、農業をテーマにした番組司会、講演などで活躍中。野菜を作る「ベジアナ」として、農ある暮らしの豊かさを提唱、全国の農村を回る。