「はいたいコラム」 沖縄の宝は持ち出し禁止


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 みなさ~ん、はいたい~!ヒージャー汁を食べてフーチバーのありがたさを知った島野菜大好きアナウンサーです。この夏、ファーマーズマーケットいとまん「うまんちゅ市場」を訪ねました。大勢のお客さんでにぎわう中、わたしもナーベラー、ニガナ、青パパイヤ、ハンダマなどをカゴいっぱい買い込みました。中でもハンダマには格別の思いがあります。

葉の裏が紫色でぬめりがあり、「水前寺菜」の和名を持つハンダマは熊本のほか、なぜか石川県金沢でも加賀野菜「金時草(キンジソウ)」として古くから親しまれているのです。
 かつて石川テレビでアナウンサーをしていたわたしは、沖縄と金沢の縁を結ぶハンダマを大切に持ち帰り、うち3本の茎をプランターに挿し木したところ、見事大成功!今もベランダで元気に紫色の葉を繁らせています。ハンダマのおかあさ~ん!あたし東京の色には染まらないさぁ~!
 一方、買って帰ろうとしてレジの人に止められた野菜があります。それは「カンダバー」。和名を八重山カズラともいうイモの葉で、植物防疫法によって、県外への持ち出しが禁止されているのです。青汁やサプリにも利用されるほど栄養満点なカンダバー。持ち帰れないなんて悔しい~!
 翌日、お昼に入った食堂でカンダバーそばを発見したときは即行注文しましたね。さっと茹(ゆ)でたカンダバーは、ぬるっとして食感もよく沖縄そばのだしに合います。珍しい味をブログで自慢しようとばっちり写真も撮りました。正直、持ち出し禁止と言われたので、本来以上にありがたさとおいしさが増した気がします。食べ物の味って、心に影響されますからね。つまり商品の価値は買う人の体験によって変わるのです。
 帰りに那覇空港で見かけたポスターでは、カンダバーのほか、サツマイモ(紅芋も)、ウンチェーバー(ヨウサイ)も持ち出し禁止でした。みなさん、これはチャンスですー!
 沖縄の観光資源とは何か?沖縄の宝は県外持ち出し禁止なのです。沖縄でしか味わえないオンリーワン。長寿沖縄の島野菜。観光客の心をぬちぐすいでくすぐりましょう。
(第1、3日曜日に掲載)
………………………………………………………………
 こたに・あゆみ 農業ジャーナリスト、フリーアナウンサー。兵庫県生まれ。介護・福祉、食、農業をテーマにした番組司会、講演などで活躍中。野菜を作る「ベジアナ」として、農ある暮らしの豊かさを提唱、全国の農村を回る。