【島人の目】高校生の憂うつ


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 ロサンゼルスから車で2時間ほどのパームスプリングスは砂漠の中のオアシスとして知られ、平穏で犯罪率の極めて低い所である。この地で昨年9月、15歳の男子生徒が、今年4月に14歳の女子生徒、5月には15歳の男子生徒が連鎖反応的に自殺をしたニュースが街全体に波紋を広げている。
 自殺した3人は知り合いの間柄で、学校でも人気の高い生徒たちであった。9月に自殺した男子生徒の母親は「不自然な行動は特に見当たらなかった。恋愛や学業成績で悩むなどの問題もなかった」と言う。地域のカウンセラーも「なぜか、どのようにすれば防止できたか、今もって妙案は出ていない。保護者だけでなく、学級内でも真剣に討議すべき問題であろう」と語った。
 随分以前のことだが「理由なき反抗」という映画があった。その時代と同じように今、アメリカの若者たちは出口の見えないイラク問題などで憂うつになり「何を信頼すべきか、将来に希望が持てない」など、よりどころがないもどかしさに陥っているのではないかとわたしは思っている。
 日本で授業科目に「徳育」を加えるべきだと論議されている。確かに道徳教育も必要ではあるだろう。しかし、生徒が自発的に大きな希望に燃えて羽ばたいていけるようなシステムなら大賛成だ。
 大人と若者が互いを信頼し合い、激論を飛ばし、切磋琢磨(せっさたくま)していけるような社会の構築が理想ではないか。
(当銘 貞夫、ロサンゼルス通信員)