「同時テロで友人を失い入隊。報復をと赴いた戦地で犠牲になっていたのは市民だった。結局、僕には戦争が何なのかさえ分かっていなかったんだ」
そう話してくれたのは、ハワイで開催された沖縄の写真展で出会ったイラク帰還兵エリックだ。恐怖でちゅうちょした自分を残し、前進していった同士たちは目の前で爆撃された。生死を分けた一瞬の迷い。「助かったという安堵(あんど)感を覚えた自分は偽善者。この罪悪感からきっと一生逃れられない」と語った。
イラク戦争は、開戦から毎月70人以上の米兵が戦死しているのに、出口が見えてこない。これまで政治的視点を絡めた報道が多かった米メディアは、戦争体験者の声を主にした番組作りへとシフトし始めた。
先日、放映されたドキュメンタリー番組「生存の日の記憶」では、イラクで重傷を負い、障害者となった10人の元兵士たちがカメラの前に座り、入隊の理由、爆撃を受けた日の記憶、その後の肉体的・精神的苦しみを淡々と告白した。右腕をなくした元女性兵は「子供を生んでも両腕で抱いてやれない」と泣き崩れた。
「両手で顔を覆う老婆に銃を突きつける米兵の写真。自分かと思った。ショックで足が動かなかった」と話していたエリック。その後、自分で資料を集めながら敗戦後の沖縄の歴史を勉強し始めたと知らせてきてくれた。戦争の真実の姿を伝えた1枚の写真。たった1枚の写真が平和への道を見失った1人の人間を再び前へと導き始めた。
生存の日の記憶をどう伝えていくか。生きている者だけが持ちうる選択だ。
(平安名 純代、ロサンゼルス通信員)
【島人の目】生存の日の記憶
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琉球新報社
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