【島人の目】いずこへ―ジンバブエ


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 マイク・キャンベル(73)は、妻のアンジェラと3人の子供、6人の孫と農場を営んでいる。所有する3000エーカーの土地に、かつて多くの動物が飼育されていたが、それらはすべて殺され、食べられてしまった。

 電話線の銅線ケーブルは略奪され、水辺の鳥は毒殺、サファリ小屋は放火され焼け落ちた。「白人はイギリスへ帰れ」と黒人は主張し、白人の多くはこの地を去って行った。
 かつて白人が支配したローデシアは白人のスミス大統領を最後にジンバブエ共和国と名称変更した。今、黒人のムガベ大統領の下で土地法改正が進む。その中で一人、マイク・キャンベルは婿のフリースと共同で土地接収を迫る政府を相手に敢然と戦いを挑んでいる。畜産からマンゴー、オレンジ、ポテト畑に改良し、12人のガードを雇い、農場をパトロールさせている。「自分はイギリス人でも、アイルランド人でもない、南アフリカ人だ」と胸を張る。
 この地に移住してきた白人はもう数少ない。土地は自由売買の法則になり、1997年以来、英国からの援助も打ち切られた。残された白人はどこへ行こうとしているのか。ロサンゼルス・タイムズは「社説」でこの問題を憂う。白人パイオニアは「第2のアメリカ建国」を夢見たのであろうが、それは実現しなかった。
 植民地から独立したアフリカ諸国は部族間抗争、宗教間対立、経済的遅延が目立つ。身近な例として青年協力隊員の下地聖美さんが9月末にジンバブエに沖縄から派遣される予定だったが、急きょ取りやめになった。
 (当銘貞夫、ロサンゼルス通信員)