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古い着物、リメイクでまた華やかに 洋裁歴60年 知花タカ子さん


古い着物、リメイクでまた華やかに 洋裁歴60年 知花タカ子さん 読谷村長浜の自宅で、縫製作業をしている洋裁師・知花タカ子さん。古い着物をワンピースやアンサンブル、かりゆしウエアなどに仕立て直している。「20歳からずっとこの仕事(洋裁)をしています」と笑顔で教えてくれた。ミシンは約50年愛用しているものだ 写真・津波典泰
この記事を書いた人 アバター画像 琉球新報社

技術とアイデアを喜んでもらえることがやりがい

読谷村長浜の自宅で、着物をリメイクした衣類を仕立てている知花タカ子さん。洋裁歴60年以上の職人だ。看板も出ていない工房だが、高い技術と古い素材同士を組み合わせるデザインが好評で、知人や近隣の人々を中心に愛用者が増えてきている。職人としての半生と、はつらつと仕事に取り組む姿を紹介する。

知花タカ子さん。芭蕉布とクンジーをリメイクしたワンピースを身に着けてくれた。どちらも沖縄の気候風土で生まれた布地なので、着け心地も快適だそう。「洋裁の仕事を100歳までしたい」と笑顔で話してくれた

「このワンピースは、私が20代の頃に、90代だった親戚のおばあさんからもらった芭蕉布をリメイクしたもの。沖縄戦の戦禍を逃れた、貴重な戦前の芭蕉布です」

知花タカ子さんの工房を訪れると、手がけたワンピースを身に着けて披露してくれた。芭蕉布とクンジー(紺地、濃く藍染めした布地)を組み合わせた一着。色合いの異なる生地を大胆に配置しながらも、全体は上品な雰囲気にまとめられている。クンジーも元は自身の母親の着物であり、思い入れが強いものだ。

和装・琉装が日常的でなくなった現在、思い入れのある着物が押入れに眠っている、という人は少なくない。知花さんのお客さんの多くは、古い着物に新しい命を吹き込もうと、持ち込みでリメイクを依頼するそうだ。

浴衣の生地にシフォン生地を重ねたワンピース
イエローのシルク生地のワンピース。屋外で着けたくなる一枚

20歳で洋裁の道へ

シックな黒のワンピースは大島紬から作ったもの

昭和17年生まれ、本部町並里出身の知花さん。きょうだいが多かったため、「嫁に行く時、ハンカチ一枚持たせてもらえなかった」とかつての暮らしを振り返る。このような家庭環境で育ったので、手に職をつけたいという意識が強かったそうだ。

アルバイトをしてためたお金で、那覇市内の洋裁学校に通った後、縫い子として働き始めたのは20歳の時。沖縄市の「モード洋裁店」に就職し、3人の子どもを育てながら約40年勤めた。洋裁学校の卒業式で、当時の校長が語った「技術は使えば使うほど宝になる」という言葉を励みに仕事を続けてきたと教えてくれた。

リメイクに力を入れ始めたのは、自宅で細々と仕事を受けるようになった約15年前からだ。

アイデアは細部にも

男性用の着物を使ったかりゆしウエア。襟やポケットの切り返しに知花さんのアイデアが光る。知花さんの夫、良武さんが着用モデルになってくれた

洋服のデザインで重要なのは「襟と袖のつき方」だと言う知花さん。テレビを見ていても「襟や袖はどんななってるかね~?」と出演者の服装ばかり気になるのだとか。自身の仕事では、一着を作るまでに何度か仮縫いし、統一感が出るように形状を検討している。

「完成した服を見たお客さんが『このアイデアはどこから出てくるの?』と喜んでくれるのがうれしいです」

そう仕事のやりがいを話してくれた。お客さんの好みや普段の服装を聞いたり、コーディネートを提案する時間も、服作りに欠かせない要素として大事にしている。何度か工房に足を運んで、知花さんと話し合いながら完成させる、というイメージでオーダーしてほしい。時間をかけることで、自分だけの一枚を手に入れることができるはずだ。

制作途中のワンピースは、浴衣生地を組み合わせた鮮やかなもの。オーダーしたお客さんの雰囲気を想像しながら仮縫いし、細部を調整している

(津波典泰)

知花タカ子さんの工房

読谷村長浜174(自宅)

※長浜公民館近く、鳳バス「長浜公民館西」バス停後ろの家屋

※訪問やオーダーは時間に余裕を持ってお願いします

(2023年9月14日付 週刊レキオ掲載)