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余った絹糸で「糸かけアート」 子どもも夢中になる魅力 南風原花織・琉球絣の織り手、當山さん


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南風原花織、琉球絣の織り作業で残る絹糸を使って制作した「糸かけアート」を手にする當山アヤ乃さん=南風原町照屋

 南風原花織と琉球絣(がすり)の織り手で、「織工房 由」を母、姉と運営する當山アヤ乃さん(46)。織り作業で残った絹糸を使い、アート作品「糸かけアート」を制作する。糸かけアートは板に打たれたくぎに糸を掛けて模様を仕上げていく。「もっと伝統工芸に親しみを感じてほしい」と地域の子どもたちに指導している。

 ―糸かけアートとの出合いについて。

 織りをしていると糸が残る。糸をつないで織るのは良くない、出来上がった織物が欠品とされることもある。残った糸はとっておいても切れやすくなるので、これまで捨てていた。この糸を何かに活用できないかと探していたところ、糸かけアートの講座を知った。2021年4月のことだ。それで飛びつくように受講した。

 実際に作ってみると、作品の完成度の高さに感動した。すぐに「教える人になりたい」と認定講師の講習を受けた。

 ―教えるようになったのは。

 最初に教えたのが、子どもが通う小学校の支援学級だった。2時間作業を続けた児童がいて、先生が「こんなに長い時間、集中しているなんて」と驚いていた。他にも、出来上がった作品を友達に見せたいと協力学級に行く子や、低学年にプレゼントしたという子もいたと報告を受けた。子どもたちが喜ぶ様子がうれしくて、先生と一緒に泣いてしまった。

 南風原町観光協会の提案で講座を開いたり、大人や学校PTAにも教えたりしている。その際は反物や端切れなどを見せて工芸品の話をする。伝統工芸に親しむきっかけになればと、余った絹糸を使っている。絹糸の肌触りや光沢を感じてもらっている。

 ―糸かけアートの魅力は。

 作業が簡単な割に完成度が高い。作業は土台の板にくぎを打つことから始まり、子どもたちが夢中になる。数を数えられたら作ることができる。保護者の手伝いもあったが、最年少では3歳の子が作った。数えながら作るので集中しやすい。そして、同じデザインでも配色が違うと雰囲気が変わる。同じ作品は生まれない。出来上がった時に、皆さんの喜んだ顔を見るとやって良かったと思う。

 ―今後、取り組みたいことは。

 私自身、子どもの小学校でPTAをしており、また支援学級や幼稚園での指導経験から、南風原町の各学校で教えたいと思うようになった。子どもに教える時は、クイズを出して南風原花織や琉球絣について伝えている。幼稚園でも教えたことがあり、それがきっかけとなり園が廃材を使って卓上織機を造り、自分たちで卒園リボンを作ってくれた。

 見学している保護者が「自分たちもやりたい」と言ってくれることが多々ある。大人に教える機会をもっと増やしたい。糸かけアートをきっかけに、南風原花織や琉球絣などに親しみを感じてほしい。

 (岩崎みどり)


 とうやま・あやの 1977年生まれ、南風原町出身。小学生のころから、曽祖母を手伝う形で南風原花織と琉球絣の作業に携わり、2002年に当時の県工芸支援センターで全工程を習得。03年に母・大城ヨシ子さん、姉・伊敷美千代さんと同町照屋に「織工房 由」を立ち上げ、自らの作品の制作を始める。国認定の南風原花織伝統工芸士(総合部門)。糸かけアートは21年4月にワークショップを初めて受講、22年8月に上級講師を取得。