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戦伝える木 復旧進む 台風6号被害で植え替え 伊江のニーバンガズィマール


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 【伊江】台風6号の暴風で倒れた伊江村西江前のガジュマル(ニーバンガズィマール)の植え替え作業が、伊江村役場農林水産課の管轄で有限会社伊江島緑化(内間賢生代表取締役)によって進められている。ガジュマルは終戦後、2人の日本兵が敗戦を知らず2年間身を隠して生活していた。作家の故井上ひさしさんが、この実話を基に劇「木の上の軍隊」の原案をつくったことで知られる。
 当初は、倒れた木を再生する予定だったが、幹や根の大部分が腐っていて難しいと判断し断念。一部残っていたニーバンガズィマール樹の横にミースィ公園から運んだ幹回り最大11メートル、高さ8メートルのガジュマルを植えた。
 これまでガズィマールの管理をしてきた同村西江前の宮城孝雄さんは「いずれ倒れると予想していたが、実際、倒れているのを見てショックだった。これまで、平和学習などで多くの観光客や学生が訪れた重要な木なので、どうにかして復活させたい」と話す。そして「村当局も守るべき木として復旧に迅速に動いていただいてありがたい」と感謝した。
 また今回、植え替えられた木の横には、2人の日本兵のうちの一人、宮崎県出身の山口静雄さんが一時身を隠していた別のガジュマルの木も生えている。1997年には山口さんの子どもたちが現地を訪れ、その木に登り当時のお父さんの心情に思いをはせ、父を守ってくれたと感謝した。
 宮城さんは「今はその木の周りには、フクギなどの別の木の葉が生い茂っているので、伐採するなどして、選定作業を行い近々公開したい」と語る。
 (知念光江通信員)
村役場の管轄で進められるニーバンガズィマール植え替え作業=8月18日、伊江村西江前