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島民皆で守る伝統 多良間村


島民皆で守る伝統 多良間村
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 宮古島と石垣島の中間に位置し、多良間島と水納島からなる多良間村。豊かな海に囲まれた村ではサトウキビを中心に野菜、葉たばこなどの農作物の栽培が盛んで、歴史ある伝統行事を島民皆で盛り上げ、守ってきた。今年、村制110周年を迎えた多良間村のこれまでの歩みを紹介する。
 (友寄開、清村めぐみ通信員)
 沖縄本島から南西約300キロに位置する宮古島。多良間村は、宮古島の西に約67キロ離れた場所にある多良間島とその北8キロにある水納島からなる。1908年4月、町村制の施行により平良村(現宮古島市)から分村して多良間村が発足した。
 農業が基幹産業で、サトウキビの汁を煮詰める昔ながらの製法で作られる黒糖は特産品として根強い人気を誇る。
 県農業振興公社や村が実施してきた草地開発事業で牧草地の整備などが進み、肉用牛の生産も盛んになってきた。1975年に651頭だった飼養頭数は、2020年に3358頭数にまで増えた。村内で生まれた子牛に対する島外の需要は増加傾向にあるという。
 農業が盛んな村では、豊年などを祈る伝統行事を島民全体で大切に守ってきた。76年5月に国の重要無形文化財に指定された八月踊りや、83年5月に村指定無形民俗文化財に指定されたスツウプナカは村の2大行事として大切に受け継がれている。
 旧暦8月8日から3日間にわたって実施される豊年祭「八月踊り」は、五穀豊穣(ごこくほうじょう)を祈願し、民族踊りや組踊など多彩な伝統芸能が披露される。行事は朝から夜まで実施され、子どもから大人までが参加する。
 旧暦の5月に開かれるスツウプナカは豊年への感謝と地域の繁栄を願う。祭祀(さいし)の中心を担う老人座や、神酒(ミス)を作るブシャ座、供える料理に使用する魚を捕るイム座など、村民がいくつかのグループに分かれて本番に向けての準備を進める。
 島が平らな地形であるため台風の影響を受けやすく、集落を取り囲むようにフクギなどの防風林がある。18世紀の琉球王国で三司官として活躍した蔡温の林業技術体系を基に整備され、県内で唯一完全な形で琉球時代の樹林帯が現存することで知られる。
 のどかな風景や豊かな自然があることから2010年、地域資源や美しい景観を持つ村として「日本で最も美しい村」連合に県内で初めて加盟した。

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 イベントで魅力に触れる

 八月踊りやスツウプナカ以外にも島外から多くの観光客らが多良間島を訪れるイベントがある。島の景色を楽しめるたらま島一周マラソンとヤギが迫力ある戦いを繰り広げるピンダアース大会だ。観光客が村の魅力に触れる機会となっており、村をPRする上でなくてはならないイベントの一つとなっている。
 1998年に始まったたらま島一周マラソンでは、島の景観や史跡を楽しみながら参加できる。当初、参加者の多くは島民だったが、回を重ねるごとにイベントの知名度は高まり、近年では島外から来た参加者が半数を占めるという。
 2010年から始まったピンダアース大会は5月と10月の年2回開催されている。試合は重量級、中量級、軽量級に分かれて実施される。会場ではやぎ汁のほかにも、特産品なども販売されており、村の魅力を存分に満喫できる。大会当日には、フェリーの臨時便も出る。