有料

差別ない平和な世界を ハンセン病回復者・上里さん 白保中で講演


差別ない平和な世界を ハンセン病回復者・上里さん 白保中で講演 ハンセン病について生徒たちに語りかける上里栄さん(右)と大田静男さん=5日、石垣市の白保中学校
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 【石垣】石垣市立白保中学校は5日、同校体育館でハンセン病を通して人権問題を学び、さまざまな人権課題への関心を高めるための講演会を開いた。ハンセン病回復者で宮古島市の国立療養所「宮古南静園」でボランティアガイドをしている上里栄さん(88)が、自身の人生を振り返りながら、家族との別れや戦争体験などについて語り、差別のない平和な世の中をつくる大切さを伝えた。郷土史家で八重山のハンセン病の歴史について考察してきた大田静男さんが八重山での隔離の歴史について解説し、ハンセン病を正しく理解する必要性を語った。
 上里さんは9歳でハンセン病を発症した。南静園に入所する前日、「母親が泣いていた」ことが脳裏に焼き付いている。父に連れられ園に行くと、父は何も言わず立ち去った。大きな声で「お父さん、お父さん」と呼び続けた。周囲を見渡すと、入所者の変形した手足が目に飛び込んできた。「帰りたい」と泣き続けた。
 1944年夏ごろから戦争について耳にするようになった。戦闘機の機銃掃射を受け、腸が飛び出している人も目にした。上里さんは鮮明に覚えている体験を基に「戦争は絶対にやってはいけない」と力強く訴えた。
 大田さんは、ハンセン病者と一緒の水を飲んだらうつるなどという誤った認識や、差別が広がった歴史を紹介した。当時の「らい予防法」で発症者は国によって強制隔離されていた事実を伝えた。「ハンセン病について正しく知って、そういう誤った捉え方は『違う』と言える人になってほしい」と強調した。
 3年生の佐藤天来(そら)さん(15)は発症者は「周りからひどい扱いを受け、大変な思いをしている。きょう学んだことを生かして、周りの人を追い詰めることをしないようにしていきたい」とハンセン病の歴史に思いをはせた。 (照屋大哲)
ハンセン病について生徒たちに語りかける上里栄さん(右)と大田静男さん=5日、石垣市の白保中学校