【糸満】糸満市阿波根~潮平の県道256号周辺で、豪雨時の冠水の懸念から近隣の潮平小学校が休校するなど地域が冠水被害に悩まされている状況を受け、糸満市は県道82号の阿波根交差点周辺に新たな排水路「白川2号幹線」を整備し、雨水を分散し海に排水することを計画している。市が22日、排水路が整備される阿波根西原区の潮平中学校で、住民説明会を開いた。参加した区民約20人からは、排水路の新設によって冠水被害の拡大や交通渋滞が懸念されるとして、反対する声が上がった。
阿波根・潮平地域には現在、浜原都市下水路、白川幹線、白川1号幹線の三つの排水路がある。市によると、豪雨時、兼城地区と豊見城市の一部から短時間に処理能力を超える量の雨水が白川幹線に流入し、冠水が発生する。白川幹線からあふれた雨水で、白川1号でも冠水が起きている。
昨年6月には白川幹線の急激な冠水に伴い、潮平小が児童を緊急下校させた。その後も同小は、台風接近時など冠水が懸念されるたびに休校を余儀なくされている。
浜原都市下水路がある阿波根交差点周辺でも、たびたび冠水が起きている。
潮平小周辺の冠水被害を早期に軽減するため、市は白川幹線に流入する雨水の一部を分水する白川2号幹線の整備を計画。2026年度までに、阿波根交差点の上流から下流の591メートルにわたって、水路となるボックスカルバートを敷設する。総事業費12億9千万円で、6割を国が補助する。
8月に着工予定だったが、住民説明会の案内を直前に受けた阿波根西原区が「事前説明が全くない」と反発し、市は工事を延期した。8月の住民説明会では、市が説明の遅れを謝罪した。阿波根交差点の下流で現行2本ある浜原都市下水路が1本に減る計画について「能力的に安全率を満たしている」とする市の説明に対し、区民から冠水の悪化を懸念する声が上がっていた。
3回目となった22日の住民説明会では、市側が阿波根交差点の冠水の原因として枯れ葉による側溝の詰まりや道路構造を挙げ、側溝の改良案などを説明した。白川2号幹線の完成後に阿波根交差点で冠水が起きた場合、交差点下流の北側にバイパス管を増設することも提案した。
しかし、冠水の原因などに関する市と区民の認識の隔たりは埋まらず、50年以上にわたり冠水被害に悩まされてきた区民の不安は払拭されなかった。阿波根西原区の花城宗順自治会長は「潮平であふれた水を受け入れてくれと言うが、阿波根西原も既に冠水被害を受けている。排水路の新設によって冠水被害の拡大や交通渋滞が懸念される。迷惑施設だ」と計画に反対し、白川幹線の改良整備による問題解決を求めた。市は阿波根西原区との合意を目指し、今後も区と意見交換を行う方針だ。
(岩切美穂)