石垣市で「場所づくり」などを手がけている合同会社「empty」(エンプティ)の共同代表で市出身の岩倉千花さん(32)。「そのくだらないが、おもしろい」という社のスローガンのもと、飲食ができコワーキングスペースのある「チャレンジ」の受託運営や、ウェブ制作、イベント企画など幅広い事業を展開している。活動の背景には人、島、場への思いがある。
―現在取り組んでいることは何か。
「チャレンジは市内の別の会社から受託を受けて運営している。イベントができる空間やコワーキングスペースがあり、人が集える場所になっている。石垣への思いが強い若者らが集まり、島について考える『八重山ヒト大学』の運営もしている。市内企業商品撮影やパンフレット制作、修学旅行生のコーディネートなど活動は多岐にわたる」
―これまでもさまざまな活動をしている。
「東京ではアイドルのマネジャーをやっていた。今でも舞台が好きで、個人で劇団の運営もしている。裏方気質で、誰かの思いを形にするお手伝いが好き。人が輝くことのお手伝いは自分も居心地がいい」
―何が活動の原動力になっているのか。
「多くの活動をする中で共通している思いは島への思い、場所づくりへの思いだ。面白そうという直感も大切にしている。同世代など高校を卒業後、島に戻ってこない人が多くいる。その理由として『仕事がない』という声を多く耳にしてきた。島に居続けられるためには経済の循環が必要。そのために働き方の選択肢を増やしたい思いもある。私のさまざまな活動を通して、次世代が『こういう仕事もあるんだ』と気づき、島に帰ってくる土壌づくりをしたいとの思いが原動力になっている」
―石垣への思いは強いか。
「めっちゃ好きという訳ではない。見たくないものも見えてくることもある。でも、島の伝統芸能、祭事、言葉など人がつくってきたものが好き。結局は人だなと感じる。手間暇のかかることもあるが、その中でも島への思いを形にして後世に残していきたい。さまざまな人が安心して暮らせるようにしたい。島で仕事をする時に自分たちは地元の人だと伝えると、相手の反応もいい」
―今後何に取り組みたいか?
「引き続き自分も周りも『面白い』と思うことをやり続けたい。失敗も込みで。emptyという言葉には空っぽの他に『くだらない』という意味もある。スーツを着てビシッとするのではなく、飾らず楽しいことをしていきたい。人を愛し周りからも愛され、生き生きしている『かわいいおばあちゃん』になりたい」
(照屋大哲)
いわくら・ちか 1991年生まれ。石垣市出身。県外の大学を卒業後、東京で芸能マネジメントなどの仕事をして、26歳で石垣島に帰省。フリーライターやカメラマンなどをし、2020年12月に仲間と共に合同会社「empty」(エンプティ)を設立し、共同代表に就任。八重山でさまざまな事業や「場所づくり」を手がけている。