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亡き母の思い胸に当選 久米島町議に唯一30代の吉永さん「誇れる島に」 お金をかけない選挙を徹底し勝利


亡き母の思い胸に当選 久米島町議に唯一30代の吉永さん「誇れる島に」 お金をかけない選挙を徹底し勝利 母・文子さんの写真を手に当選を喜ぶ吉永将志さん(左から4人目)と父の安雄さん(同3人目)ら=12日、久米島町真我里
この記事を書いた人 Avatar photo 藤村 謙吾

 【久米島】12日に投開票された久米島町議選では、最年少の吉永将志さん(37)が、当選者の平均得票数267票を大きく上回る417票を得て、トップ当選した。町議選には定数14に対し、16人が立候補し、立候補者の平均年齢が65歳の中、将志さんは唯一の30代だった。島民の若者への期待が現れた。

 「先輩方には、若者も一緒に島を背負う覚悟があると示したい。町の予算をはじめ具体的な情報を共有し、若者にも島の未来へ興味を持ってもらい、誇れる島を作りたい」と熱く語る。

 将志さんは仲里小、中を経て、久米島高校卒業後、鹿児島県の志學館大学に進学し、教員免許と福祉関係の資格を取得。24歳で島に戻り、介護サービスを提供する一般社団法人を設立した。

 2015年には兄の浩さんが久米島町議選に最年少の35歳(当時)で初当選。将志さんも浩さんの選挙戦を支え、模合にも参加し島民の声を聞いた。浩さんは2期目の町議選に当選後、22年の久米島町長選に出馬するが落選。将志さんは、兄が町長選で敗れた姿を見て「今はまだ自分たち世代の出番ではないのではないか」と思い悩んだ。

 兄の町長選からほどなくし、母の文子さんが死去。将志さんは「自分たちを見守り、支援してくれた母に、頑張りが評価されていることを最後に見せられなかった」と悔やみ、母への思いを胸に町議選出馬を決めた。

 「町のために動く気持ちそのものを評価してほしい」と、事務所や後援会を設けず、簡易な選挙カーを用いるなどお金をかけない選挙を徹底。志を共にする同級生や、仕事を通じて関わった高齢者らが応援してくれた。

 「全ての人が働ける環境を作りたい」との言葉通り、投開票日も学校の見回りをする高齢者サポートのボランティアに汗を流し、自宅に戻ってきたのは、午後10時過ぎだった。「久米島を変えたいと思う仲間、若い力を増やす大きな流れを作りたい。この期待を裏切らないよう、勉強し続ける」と決意の表情を浮かべた。

 (藤村謙吾)