prime

「生活が壊される」うるま市に陸自の訓練場計画 事前説明なく、住民に怒りと不安 <ニュースのつぼ>


「生活が壊される」うるま市に陸自の訓練場計画 事前説明なく、住民に怒りと不安 <ニュースのつぼ>
この記事を書いた人 Avatar photo 金盛 文香

 【うるま】うるま市石川の東山カントリークラブ跡地に、防衛省が陸上自衛隊の新しい訓練場建設を計画している件で22日、土地取得費を盛り込んだ2024年度予算案が閣議決定された。しかし、防衛省から住民や市に対して事前の説明はなかった。「生活の場」の近くに訓練場を建設する計画に、「訓練によって生活が壊される」「戦争につながる道具はいらない」と混乱や怒りが広がる。

 東山カントリークラブ跡地がある旭区自治会。20日の評議委員会では、訓練場建設計画の報道が議題に上がった。

 石川修会長(70)によると、建設予定地と住宅地までの距離は最も近いところで道路を挟んだわずか6メートル。事前の説明は「全くない。報道で知った」と戸惑う。

 委員会には15人が出席し、14人が計画に反対、1人は「内容を把握してから判断したい」との結果だった。

 石川会長は「予算化が決まってから知らされるのは横暴だ。早めの説明を求める」とし、市や沖縄防衛局への働きかけを検討している。

 旭区の住民からは懸念の声が相次ぐ。訓練場予定地から約100メートルの場所に住む飯田真里菜さん(50)は、夜間訓練やヘリコプターが離着陸する可能性に触れ「騒音や事故のことを考えると恐怖、不安しかない」と顔を曇らせる。

 訓練予定地を見下ろせる場所には県立石川青少年の家がある。毎日のように小中高生が自然体験を兼ねた学習に訪れる施設だ。山城長徳さん(74)は自衛隊の訓練によって「子どもたちに戦争の様子を見せることになる」と危機感を示した。

 70歳の自営業の男性は「最初は実弾を使わないと言っていても、いざ訓練が始まるとどうなるか分からない」と憤る。戦争を想定した訓練や米軍使用の懸念に加え、「お金が絡んで地域が分断されないか」と不安は膨らむ。

 1959年に起きた宮森小学校への米軍ジェット機墜落事故を語り継ぐ「石川・宮森630会」の久高政治会長は「今でさえ米軍基地による被害が後を絶たない。さらに自衛隊の訓練場建設によって生活が脅かされる状況は許せない。市民を無視した傍若無人なやり方だ」と批判した。

 沖縄防衛局は本紙の取材に対し、22日にうるま市へ説明したとしている。「事業を進めていくに当たっては周辺住民等の方に対し、丁寧な説明や適切な情報提供を行っていることが大変重要と考えている」とするが、市や住民に対して事前の説明はなく、予算案の閣議決定後の「事後報告」となった。

 うるま市の中村正人市長は「地権者と防衛省の土地売買に関わるため市長としてコメントできない」とした。事前説明がなかったことに対しては「地権者との関係で慎重になっていたのだろう」と理解を示した。今後は「推移を見守る」としている。

 (金盛文香)