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落語のススメ 吉田健一(那覇・南部班)<ゆんたくあっちゃ~>


落語のススメ 吉田健一(那覇・南部班)<ゆんたくあっちゃ~>
この記事を書いた人 Avatar photo 吉田 健一

 先日、県初の女性落語家・金原亭杏寿さんと師の金原亭世之介さんによる新春落語会を取材した。杏寿さんが披露したのは、番町皿屋敷の幽霊お菊が、その美貌から人気を集めるようになる怪談「皿屋敷」。オリジナルソングを歌う場面では見事な歌唱力を発揮し、「怪談会のアイドル」とも称されるお菊を見事に演じた。会場はさながらライブ会場のようだった。

 杏寿さんの噺(はなし)の中で、印象に残った言葉があった。「落語家は言葉を扱う商売だから、言葉を大事に使う」。例えば、「する」という言葉は「金をスル」などと縁起が良くないということで、「当たる」に言い換えるという。スリの被害に遭ったら「当たった~」と、笑いを誘う場面も。

 新聞記者も言葉を扱う商売。言葉は時には人を傷付けたり、人を癒やしたりもする。だからこそ、日頃から記事を書く際はその表現に細心の注意を払う。

 翻って、言葉が軽いと感じる職業がある。政治家だ。特に政府与党の政治家は失言しても「誤解を招いたのであれば申し訳ない」などと、さも謝罪したかのように振る舞う。「誤解」したわれわれが悪いようだ。落語は笑えるが、政治家の失言は笑えない。政治家にこそ落語をお薦めしたい。わたしも言葉を扱う者として、読者に笑いや癒やしを届けつつ、政治家には誤解を与えないよう言葉が持つ重みを伝えたい。

 (那覇市)

私が書きました
吉田健一 那覇・南部班