宜野座村の「かでかわ弁当」が2月29日、43年間の歴史に幕を閉じた。最終日、最後の弁当が売り切れても多くの常連客が感謝を伝えようとおとずれ、花束や記念の品々が贈られた。
宜野座村では公共工事やアパート、マンションの建設ラッシュが続いており、弁当の需要は増している。ますますの商売繁盛が望めた一方、店主の嘉手川玲子さんの体力は限界を迎えていた。「おいしかったよ」との言葉が“最幸”の贈り物だったといい、「やり尽くした」と感無量の様子だ。今も閉店を知らずに来店する客がいるという。
43年前、当時の宜野座村に弁当屋がなく、総菜屋や鮮魚店で働いていた玲子さんは、4人の子育てに注力したいと子どもたちが寝静まっている時間帯を利用した「かでかわ弁当」を開業した。当初は配達専門だった。深夜1時に出勤し、前日の営業終了後に仕込んだ食材を調理、午前5時から販売開始、お昼過ぎの営業終了後には、また翌日の仕込みを始めた。
43年間、睡眠時間は1日5時間ほど。体力勝負の弁当屋で身体を酷使し、10年前には両ひざの関節を手術。腰部脊柱管狭窄症も併発し1年前ついには、まともに歩けなくなった。「今、辞めなければ、本当に身体が駄目になってしまう」と、閉店は苦渋の決断だった。
1番の人気商品「麩チャンプルー弁当」だけを毎日、買う常連客も多かった。近年の物価高騰でも値上げせずに「薄利多売」を貫いた。阪神タイガースのキャンプ関係者からの注文も入った。4月には腰の手術を行う。元気になって、15人の孫たちと大好きなスノーマンの目黒蓮さんの「推し活」をしたいと話す笑顔には、「人徳」があふれていた。
(池辺賢児通信員)