大宜味村の国道58号沿いの辺土名高校前バス停の待合所に生き物の絵が描かれていることに気付いた調査員。さっそくその謎を調査しました。
「辺土名高校前」バス停(名護向け)の待合所にやんばるに生息する生き物が描かれているのを発見した調査員。生き物に詳しい同行のカメラマンは「これは生き物が分かっている人しか描けない絵」と、特徴をよくつかんでいる絵を絶賛していました。バス停の後ろにある辺土名高校に問い合わせてみると、やはり同校が関わっていたことが判明しました。
落書き対策と魅力発信
3月に完成したという絵について桃原健次校長に経緯を聞くと、待合所の落書きを北部国道事務所に依頼し、きれいにしてもらったことがきっかけとなったそう。落書きが繰り返されることを懸念した桃原校長は「絵を描いたら落書き防止になるのでは」と思い付きました。自然環境科に相談すると、生き物の絵などでコンクール受賞歴などがある生徒が描くこととなり、北部国道事務所の許可を得て実現したそう。
絵を描いたのは、同校の環境科(現、自然環境科)を3月に卒業し、4月から琉球大学農学部亜熱帯地域農学科に進学した、上原蓬(よもぎ)さん。生き物好きの上原さんは、幼い頃から自然や生き物に触れてきました。自身で撮りためていた生き物の写真を基にたった一人で絵を描いていったといいます。
「描画中」と看板を立てて、「約20日間、3年生の就職休みを使って朝から夕方まで毎日描いていました」と上原さん。描いた生き物は7種。村のチョウに制定されているツマベニチョウのオスとメスやアオミオカタニシ、県の天然記念物オキナワイシカワガエルなど自身でチョイスしたものや、新種のリュウジンオオムカデなど後輩たちからのリクエストなども反映。桃原校長からのリクエストで大宜味村の特産物、シークワーサーも足しました。
1つの生き物を描くのにかかったのは平均2日間。オキナワイシカワガエルはなんと4日間も費やし、下描き用のチョークで、何度も下描きを消しては描き直したそうです。5色のペンキを駆使し、色の三原色を使って、色付けしていきました。
チョウは羽ばたいている場面を描き、高い場所で活動するヤンバルテナガコガネは上からはうように、逆にリュウジンオオムカデは地面をはうようにと習性に基づいて配置も考えています。
生き物の特徴を反映
「生き物を知っている人が見ても『おっ!』となるような絵を狙いました」とは言いつつ、昆虫が苦手な人もいることも考慮したという上原さん。特徴をつかみながらも、リアルを追求し過ぎず、かわいさも感じられる絵になっています。
バス停は同校の生徒にとって思い入れのある場所。向かいの海側にある赤瓦の待合所はバックに海があって、観光客の撮影スポットになっているといいます。対照的に絵がある山側は「辺土名高生ぐらいしか使わないんです。いろんな人が使うバス停になればいいし、反応があるとうれしいです」と話します。世界自然遺産にも登録された地域に現れた躍動感あふれる生き物たちの絵。バス停にいるやんばるの貴重な生き物たちに会いに行ってみてはいかがでしょう。
(2024年4月11日 週刊レキオ掲載)