【糸満】糸満市教育委員会(屋良朝俊教育長)はこのほど、市内にある県内最大の門中墓の墓誌「幸地腹(こうちばら)、惣山(すうやま)・赤比儀腹(あかひぎばら)両門中墓誌」を市指定有形文化財(歴史資料)に指定した。同墓誌は1684年に制作され市内最古。
「惣山」は赤比儀腹門中の昔の名称。墓誌には、幸地腹門中の祖先と惣山・赤比儀腹門中の祖先が、互いの遺骨が混在するのを避けるため、当世墓の墓室内の東側に幸地腹、西側に惣山・赤比儀腹の遺骨をそれぞれ葬る旨が記されている。
市教委は「17世紀末期における墓の所有や利用の状況などを知ることができ、沖縄の墓制の変遷や門中組織の形成過程を考える上で貴重」だと評価する。
1935年に当世墓の改築と拡張工事を行った際に墓室内に納められているのが発見され、67年の33年期香盆の際に当世墓前庭の袖石内にはめ込まれた。両門中が2021年11月、市教委に文化財指定を申請し、市教委から市文化財保護委員会への諮問を経て今年3月、同委員会が市教委に「文化財指定が相当」と答申していた。
今月12日、屋良教育長から指定書の交付を受けた幸地腹門中の上原幸久代表理事(60)は「後世に残すべき価値ある遺産。大切に守って伝えていきたい」、惣山・赤比儀腹門中の金城巖理事長(73)は「指定を受けることができ感謝する」とそれぞれ述べた。
今後、両門中は案内板の設置なども含め、墓誌の保存・管理法を市教委と検討していく。
(岩切美穂)